あたらしいものは、
どこから生まれてくるのだろう。
その道を辿っていくと、
そこには必ず空気がある。
ものづくりの空気。
人は、その空気の中で想像し、
創造していくのだと思う。
大泉工場は、未だ世の中に存在しない
全くあたらしい「価値」をつくり出すために、
あたらしい空気をつくっています。
元々、川口はものづくりの街。大泉工場も機械・鋳物工場を基盤に発展してきた歴史がありますが、私が入社した2008年には、最後の製造工場を閉鎖し、製造業から完全に手を引いていました。当時社長だった母から「(最後の閉鎖した)空いている工場を何とかしたい」と持ち掛けられ、2009年に映画やドラマのロケ地として貸し出す「レンタルスペース事業」をはじめました。
それが軌道に乗って、そのまま4代目として川口で不動産事業を生業とし、川口に住んで…と、それだけをやっていく道もあったのでしょうが、会社が永続するためには新しい取り組みに挑戦する必要があると考えました。
正直、自分自身が大泉工場で働くまでは、先祖代々家族が事業をする場所でありながらも、川口に対する愛着がほとんどなかったんです。ただ、この場所の桜が見事だったので、仲間を集めて見てもらったら、みんな大絶賛してくれて。地元の方々とも定期的にお話しをさせていただくなかで、この地域の歴史などを伺い、改めて自社の価値を再確認しました。
そうした経緯があったからこそ、一度は途切れた「ものづくりの空気」を蘇らせ、後のポップコーンやジュース、KOMBUCHA等の新規事業への挑戦につながったのだと感じています。
価値を再認識する一方、川口の産業の現実もあって、それがものすごくもったいないなと。そう感じるようになった頃と同じタイミングに海外で、木の温もりと鉄の冷たさが共存する、インダストリアルファニチャーに触れて“温度を感じるものづくり”がすごくかっこいいと思った。と同時に、川口でもつくれるのでは、と可能性を感じたんです。
鋳物工場があった川口。私たちができることで職人さんたちと一緒に、川口のアイデンティティである「ものづくり」を中心とした事業を立ち上げ、川口を世界のKAWAGUCHIにしていく。それができたら面白いなと。
たとえば、私がニューヨークのブルックリンに行って帰ってきて「どこ行ったの?」と尋ねられたら、「ブルックリン」って答えます。でも、海外の人で「川口に行ってきた」と言う人は、今いないと思うんですよ。
一方、ブルックリンってニューヨークの一地区なんですよね。そんなふうに川口を訪れることが一種のステータスになったら、世界中から人が集まって来る都市になる。
世界中で「これ、すごくカッコいいプロダクトだけど、どこで作っているの?」となったときに「川口っていう、東京の近くの都市だよ」「へえ、すごい職人がいるんだ。行ってみたいな」という流れができると、私は信じています。
今走っている事業、ポップコーンもコールドプレスジュースもKOMBUCHAも今となっては日本でも浸透してきていますが、そこに踏み込んでいこうとした当時は、未知なわけですよね。きちんと事業として成り立つか、保証はない。
ただ、その未知の領域がもつ“空気感”を楽しめるかどうか。それは、これまでも、今も、これからも、大泉工場にとって欠かせない視点だと思っています。
私がスペシャルティポップコーンに目を付けたのが2008年、翌年には本格的に事業としてスタート、その3年後には、日本でポップコーンブームが起きた。世界の空気を肌で感じてそうなると信じて動いていたし、その空気を楽しんでいました。同じことを100人が考えていたとしても、誰が先にやるか。それが大事なんです。
コールドプレスジュースやKOMBUCHAも同じで、日本できちんとそれが文化として根付くと信じ、コールドプレスジュースでは、世界最大手のマシンメーカーの正規代理店として活動しています。KOMBUCHAに関しても、ブルワリーをゼロから創り上げ、誇りを持って事業化したのは、大泉工場が最初だと思っています。最近では、海外からもKOMBUCHA BREWER(醸造家)が、私たちのブルワリー目掛けてやってきます。世界から人が、川口へやってくる。奇しくも、KOMBUCHAでは私たちの目指す世界観に近づいてきています。
私は常に、「吸っている空気が一緒だな」と思える人と何かやりたい。そういう気持ちでいます。入社する・しないに関わらず、大泉工場を面白がってくれる人と、世の中になにか仕掛けていけたら。これからの出会いが楽しみです。
初めてここを訪れた時は、きっと今となっては誰も想像できないような雰囲気で、決して建物が活き活きとしてはいなかった。不気味、と言ったら大泉さんに叱られるかな(笑)たくさんの荷物に溢れ、資料も残っていないので全貌は誰にもわからない。そんななかでも、建物自体が素晴らしいつくりだということだけは、直感的にわかりました。
私はこれまで、新築の家づくりを多く手がけてきました。でもある時、それは果たして未来にとって豊かなことなのかを考えるようになりました。ヨーロッパやアメリカでは300年以上もの建物が大切に受け継がれています。日本は古くなれば価値がなくなってしまう。
大泉工場のように100年続く会社が、80年前に建てられたこの洋館をリノベーションして、オフィスにする。
歴史ある会社がするからこそ、大量消費・大量生産のなかで大きくなってきた今の建設業界に一石を投じられるのではないかと思いましたし、何を語らずとも、この場所に来ればみんながここに流れる空気感を体感できる。そんな場所にするために、大泉社長が考えていること、目指している姿をそれこそ空気感レベルで共有できるまで打合せを重ね、ミラノやアメリカのものづくりの拠点となっているポートランド、ロサンゼルス等、大泉社長がかつて事業のインスピレーションを受けた様々な場所にご一緒しました。
これは私の感じたことですが、大泉さんがこの洋館をリノベーションして本社を移転する大きな決断をなされたのは、なによりもここで働く人をハッピーにしたかったんだと思うんです。この川口という街の魅力、歴史を、まずは自分たちスタッフが体感しないことには。そんな想いでこのプロジェクトを手がけられたのではないでしょうか。
経済優先の時代から豊かにはなったけれど、ハッピーじゃない。幸せってなんだろう。そんなことをみんなが普通に考える時代になりました。働くこと、生きること、暮らすことを再構築して、見つめ直す。そんな今の空気感もこの場所には漂っているな、と感じます。
リニューアルした建物はとにかく隅々まで見ていただきたいですが、まずは外観の石を見てほしいですね。グリーンがかった大谷石は、今採れるものとはまったく違う。いい色なんです。圧倒的な重量感は、歴史がもつ重みを実感いただけると思います。
今回、リニューアルにあたってのコンセプトは“本物は時を超える”としました。古いものも、新しく取り入れたものも、建物に負けないようすべて本物だけを使っています。石もそうですし、塗壁、木、鋳物の街・川口を象徴するアイアン。インテリアも、本物の素材を使って場所に合わせて作ったオリジナルのものも多くありますし、70年前のデザインのセブンチェアや、現代の作家でもヤコブセンのように50年、100年と長く愛されるであろうものだけをチョイスしています。
家具は、未知のものに人生をかけ、長年蓄積した技術や時間など、目に見えないものすべてを物象化したもの。そこは私も同じ気持ちで、デザインは愛そのものです。大泉さんの想いを汲み取ること、スタッフに喜んでもらう姿を想像すること、そういうものを強く、強く、持たない限り、携わってはいけないという想いでやってきました。
世界中でここにしかない、誇れる事務所になったと思います。人が見に行きたい、面白い、楽しいと感じる。そんな、求心力となる場になったのではないでしょうか。大泉工場のような、食と文化と地域を巻き込んで世界へ発信する取り組みは珍しいと思います。もっともっと形になってほしいですし、多くの人にそこに掛ける本気度、熱量が違うということも知ってほしいな、と思いますね。
たとえば、FUN FOOD事業のポップコーン。製造過程が楽しく、ふわっといい香りがして、みんなが幸せな気分になる。大泉工場では、地元の子供たちや児童養護施設、被災地など笑顔を生み出す活動も続けてきました。今後はそこで提供するポップコーンもまた、今の子供たちに多いアレルギーやアトピーは“不自然な”食べ物が影響しているという仮説のもと、生産する過程において、人工的なモノを極力を使わず、地球環境にも悪い影響を与えない、オーガニックなポップコーンの展開を視野に入れています。
「洋館をリノベーションしてオフィスにするあたり、世界中のクリエイターたちのいるオフィスを、沢山訪れました。やっぱり良いものを生み出しているクリエイターの“場所”は、すごく美しかったんですよね」(大泉社長)自分たちの携わる場所=環境。それは“自然”という大きな単位であって“身の回りの机”という小さな単位であっても、その環境を美しく保ち、明日へつなぐことは、私たちの使命だと考えています。
大泉工場の「空気」に共感し、
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