前回は、テンペストが生まれる明治大学の加藤 英八郎講師の出会いについてお届けしました。インタビューの続きではテンペストの開発秘話をご紹介します!
入海さんは学者肌ですよね?学者を目指さなかったのですか?
私は学者ではなく、企業を創りたい。プロダクトを売る方からすると「研究者みたいだね」と言われることが多いのですが、
スタートアップの根幹は、研究開発だと考えています。
テンペストを作るまでに基礎となる色々なテンペを学びました。
一般的なテンペの作り方を教えてもらい、インドネシアに渡り、その学びをさらに深めました。
インドネシアの国営放送から取材を受けるほど、活発に熱心に取り組んでいましたよ。(笑)
テンペと一緒のものでは意味がない!その道のパイオニアを目指す!
みんなが作れるテンペを作っても仕方がないと思っていました。
「誰もまだ目を付けていないものを革新的な技術を使って作り出したい。」
その道のパイオニアになりたいという思いから、スタートアップとして追及すべき道だと考えるようになりました。
インドネシア式「テンペ」を皮ごと発酵させるのは難しい
テンペ=一般的に大豆の皮をむいて発酵させたもの。インドネシアでは大豆の皮を手で剥いたり、足で剥いたりしていました。
この作業が実はかなり大変。さらに、剥いた皮は捨ててしまう状況でした。
しかし、皮を剥くのには理由があります。皮ごと発酵させようとすると雑菌が含まれていることがあります。
実際、インドネシア式の製造方法で皮ごと発酵することができないかと試したことはありましたが、
「臭み」「えぐみ」が出たり、ボロボロと崩れてしまったりと、皮ごと発酵させることの難しさを知ることになります。
なんとか皮ごと発酵させたいと思い、菌の配合、発酵方法、設備の改造に励みました。
テンペを超えたものという意味を込めて「テンペスト」
試行錯誤の末に、結着が良く包丁で切っても崩れない、それでいて大豆臭さが出ない、且つ皮ごと発酵ができる「テンペスト」の製造に成功しました。
これは他社にありません。
ただ、一般的にはテンペストとテンペは同じものとみなされてしまうことが多いのですが、
差別化を図らなければという思いと、この差を認識させるために、「テンペスト」という名前を付けました。
インドネシアでビジネスを広げようという発想は?
インドネシアでビジネスの土台がないと難しいです。
日本人がそこに住み込んで、現地の方と信頼関係を築かないとモノゴトが動きません。
日本では周りの人の協力や地域にあわせて製品を最適化する力を実感していました。
大企業であれば、現地での協力や人材の確保も容易だと思いますが、
スタートアップのような実績のない企業をインドネシアの企業が信用してくれるとは思えなかった。
だから、最初のビジネスは信頼の得やすい日本でやろうと決意したのです。
一緒にテンペストの改良を進めた加藤農園株式会社の加藤さんとの出会いは?
私ひとりでは製造は出来ません。そのためテンペストを商品し、販売する課題は、一緒に事業を進めるOEM先の確保でした。
しかし、発酵食品のOEM受託先はかなり少ないのが現状です。
製造ラインにおいて他の菌(納豆菌)が混入すると、すべての製造ラインが影響されストップするからです。
またこちらの細かい設備に関する要求を反映してくれる場所はないに等しかった。
そんな中、現在は発芽玄米を作っていて、昔テンペを作っていたことがある加藤農園様を知り合いから紹介してもらいました。
テンペストを通じ、私は人に恵まれました
加藤農園様は、「モノづくり、良いものを作ること」において、自分の手でまず作るという考えを大切にしています。
そのため、OEMの考え方は性に合わなかったのかなと思っています。
様々、テンペストに関してこれからの可能性をお話する中で、加藤農園様は「小ロットの生産でも良い、場所代もいらないよ」と言ってくれました。
本当に嬉しかった、本当に。
「一緒に苦労しました」
研究室から設備の規模を大きくすると、状況が大きく変わります。1kg単位で作った時と、60kg作った時で、発酵の状態が大きく変わるのです。
大量生産にシフトしただけでも、かなりの試行錯誤が必要になりました。
また、発酵食品は結果が出るまで、時間が読めず、泊まり込みで作業を行うこともありました。
この苦労を踏まえ、補助金の申請をし、設備改良に励んだのです。
しかし、テンペストを安定させる設備は保健所では前例がなく、これにもかなり苦労しましたね。
加藤農園様も「もうやめたい」とまで言っていた。言い合いや衝突したこともありましたよ。
豆を変えたら容易なのでは、ひよこ豆を使おうかという話も上がりましたが、良質な栄養が豊富な大豆で作ることにこだわりがあった。
大豆は、タンパク質が豊富で栄養価が良いのですが、そのままでは風味は良くなく、消化も良くない。だから、発酵、加工させる必要があります。
テンペストが製品として、かたちになったときの心境は?
やっとできたという感じ。お金、設備が限られた中で作りだすのは大変だった。
設備に関しては、芯温を拾って、自動で運転を切り替えるエアコンを作り創意工夫を凝らすなど、それなりに苦労があった製品でしたね。
苦労を重ねた分、思い入れの強いテンペストが出来ました。
今回のインタビューでは、入海さんが経験したテンペストができる開発秘話をお届けしました。
次回は「テンペスト、その先にある未来について」をお届けします!