みなさん、こんにちは!広報のMadokaです。
mizuiRoインタビュー番外編Vol.5は、廃材を使用して家具を製作されている「PEACE CRAFT」西村まさゆきさんのインタビューです。今回は中編をお届けします。
<<前編はこちら>>
ーー廃材を使った家具を作るようになったきっかけを教えてください。
西村さん:さかのぼると18歳の時ですね。今年で41歳になるので、23年前ですね。
大泉工場代表 大泉寛太郎(以下、KAN):僕たち同い年だったんですね?!
西村さん、てっきり僕より年上だと思っていました。笑
西村さん:僕もです。急に親近感湧いてきちゃいました。笑
話は戻りますが、18歳の時に大工の見習いになったんです。
親方は、現代では珍しいタイプのなかなか物事を教えてくれない様な寡黙な方でした。会話といえば「あれもってこい」とかで、特に怒られることもなくて、相手にしてくれなかったんです。
僕は「たくさん覚えたい」「プロの大工になりたい」という思いで弟子入りをしたので、何としてでも色んなことを覚えたかったんです。「教えてください」と言っても、無視されちゃうんですよね。笑
KAN:それ、一番きついですね。。。
西村さん:そうなんですよ。覚えるために見て、真似して、上手くいかなくて、なんで上手くいかなかったのか考えて、やり直して。その繰り返しでした。
そんな僕の姿を見ていた親方が「廃材なら、もっと好きに使っていいよ」と言ってくれて。
仕事終わりや休み時間の中で、廃材を使って色んな練習をしました。まっすぐ切る練習、くぎを打つ練習だったりと本当に初歩的なことからやり始めましたね。
高橋:トライアンドエラーを繰り返しながら、大工としての技術を取得されてきたんですね…!
西村さん:その後、僕が廃材を使って家具を作るきっかけになる出来事が起きました。所属していた工務店が新しくオープンする居酒屋の内装を任されたんです。腰壁(床から約1mの高さまで)に板を張るデザインでした。
日本の建築デザインには、壁や天井には板のつなぎ目をみせないという決まりのようなものがあるんです。それに加えて、木材には規格があって。1820mmか3640mmです。1820mm規格の木材を使用して1mほどの板張りをするので、820mmほど木材が余ってしまうんです。つなぎ目を見せないという決まりがあるので、残りの木材は捨てられてしまうことになります。
その時にすごく違和感を覚えました。デザインだから、決まりだから仕方がないというのは分かるんですけど。だったら、木材の規格に合わせた腰壁のデザインにして、木材の廃棄を避けたらいいのにと。
余った木材は全部引き取りました。とても質のいい板材だったので、ティッシュ箱をたくさん作って、上手くできたものをオープン記念時に居酒屋のオーナーさんにプレゼントしたんです。そしたら、想像以上に感動してくれて、涙を流しながら喜んでくれて。無事にオープンできたという想いもあったとは思うんですけど。
KAN:いやぁ、オーナーさんの気持ち、わかります。捨てられるはずのものが新しい価値となって戻ってきたら感動しますよ。
西村さん:僕、やんちゃ坊主だったんです。笑
学校でも家でも褒められたことがなかったし、親方に褒められたこともなかったから、オーナーさんが喜んでくれる姿を見て、18歳ながらに人生で初めて承認欲求が満たされた感覚がありました。
それを機に廃材から新しいものを創り出して、プレゼントするということを始めたんです。それが廃材を使って家具を作るようになったきっかけですね。
高橋:なるほど…!最初はビジネスではなくて、プレゼントするという形だったんですね。
西村さん:そこから営業職に転職して、設計の勉強をしながら働いていました。実務経験を積んで、建築士の資格を取ろうと志していたので。
PEACE CRAFTを立ち上げる前に最後に就職した会社が工務店で、営業兼デザイナーとして入社しました。やはり工務店ということで、廃材がたくさん出ていました。1週間で1コンテナ分の廃材が出てしまうほどです。しばらくの間営業として働いていたので、廃材のことは忘れていました。
新しい木を仕入れて、家を建てて…リフォームも受注していたんですけど、まだ使えるものも解体して、また廃材が出てきて…、そんなことを繰り返していく中で、忘れていた廃材のあり方に改めて違和感を抱きました。
当たり前になっているデザインの考え方を覆して、無駄なく木材を使えるようなデザインやモノづくりができないかと思うようになりました。違和感からのスタートでしたね。
KAN:親方の寡黙な空気感や見て学ぶ感覚は、西川さんも一緒なんじゃないかな?
1110 CAFE/BAKERY 店長/シェフ 西川浩康(以下、西川):そうですね。何も教えてもらえないというのは当たり前で。包丁すら握ることもできず、一日立っているだけで終わってしまう日もありましたね。
KAN:西村さんのように、余った食材なら使っていいと言われることもあったの?
西川:最初はありませんでした。そのうち、限られた食材だけで賄い作りを任されることも出てくるんです。ただ、若手の時は炒めるや焼くなど簡単な調理法しかできず、「美味しくない」と言われ、食べてもらえないこともありましたね…。西村さんのご経験には共感する部分がたくさんあります。
ーー廃材を使った家具を創り始めたとき、どんな思いがその気を奮い立たせたんですか?
西村さん:もったいない精神です。ただ目の前にもったいないものがあるから、どうにかして生かしたいなと。正直、環境のことは全く考えたことがなかったです。
PEACE CRAFTでは「誰かにとっての不要を誰かにとっての必要に」というコンセプトを掲げているんです。
高橋:わっ、とてもカッコいいですね。胸に刺さりました。
西村さん:僕がやりたいことをカッコつけて表現したんですよ、刺さりやすいでしょ?笑
最初は環境のことは考えていなかったけれど、不要なものを変化させて、お客さんに喜んでもらうということを繰り返してきたときに快感を覚えて。
誰かがいらなくなったものに手を加えてカッコ良くしたら、誰かがほしいものに変化する、ということに立ち会っている感覚が快感でした。
もったいない精神で始めた活動も、実は環境に良いことだったということに、すぐ繋がりましたね。あとからついてきた感じですね、環境保護のことは。
ーー活動を通して、環境のみならず人間にもいい影響を与えられたという実感はありますか?
西村さん:むしろ、地球環境を良くする以上に、人にいい影響を与えているのではないかと思っています。
サステナブルという言葉は数年前からよく耳にするようになりましたよね。持続可能な社会づくりとか。僕は”サステナブル=環境保護”とは考えていないんです。
環境に良いことをするには、僕たち人間自身が、心身共に健康でなければできないし、金銭的な余裕も必要で、時間も必要。僕は従業員や外注先に対して、金銭的余裕を与えられるような意識を常に持つようにしています。適正な価格で働いてもらって、またやりたい、続けたいなと思ってもらう。そうしたことがサステナブル(持続可能)で、こうした考え方が地球環境の保護に繋がっていくと思うんです。
僕は環境活動家ではないです。どちらかというと事業家。
大泉さんたちは、僕らが創る家具を発注したことで、環境活動に一つ貢献しましたと言えます。そのような正当性を持てるモノづくりを通して、僕はゴミを減らす活動をしています。
地球環境を良くしていくには、時間と心の余裕が必要。自分にゆとりがないと、ビーチクリーンや河川敷のゴミ拾いも出来ないし、環境のことなんて考える余裕はないですよね。自分を満たすことがサステナブルの第一歩だと考えています。
後編では、PEACE CRAFTと大泉工場のこれからや西村さんのクリエイティブな発想の秘訣について伺います。