嗚呼、ホワイトアスパラガス!

3月14日、東京で桜の開花宣言が発表されました。観測史上最も早い開花だそうです。
日本人ならみな春を感じる、桜の便り。ではほかの国の人々はどんなことで春の訪れを感じるのでしょうか。

1,アスパラガス前線

3月から4月にかけて、日本では、テレビの天気予報コーナーで桜前線を見ながら、春がどこまでやってきているかを知ります。一方で、ヨーロッパのひとびとは、ホワイトアスパラガスの旬に春を感じます。3月下旬にイタリア南部やスペインから始まるホワイトアスパラガスの収穫は、その後フランス、ベルギー、オランダと北上していき、もっとも消費量が多いドイツでは5月上旬になります。この1か月半ほどの間、ヨーロッパのテレビでは、アスパラガスの旬の移り変わりを毎日放映し、人々は春の訪れを感じ、おいしいホワイトアスパラガスを食べに行く計画を立てるのです。旬の2か月だけでドイツでは125,000トンものホワイトアスパラガスが食卓に上ります。
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2,グリーンかホワイトか

アスパラガスには、ホワイトとグリーンがあります。これは種類の違いではなく、栽培方法の違いです。芽が出てすくすく育てたものがグリーンアスパラガス。芽が出ても遮光のハウス栽培や土をかぶせて育てたものがホワイトアスパラガスです。ホワイトアスパラガスは日に当たらないために青臭さがなく、柔らかく、甘みとかすかなほろ苦さがバランスよく美味しく育ちます。一方で日に当たったグリーンアスパラのほうが栄養価は高く、しっかりした歯ごたえがおいしいです。
ホワイトアスパラの栽培方法は、偶然発明されました。16世紀のイタリアで飢饉が起き、農民たちが畑を掘り返して、食べられるものがないか探していた時のこと。偶然土に埋まったままだったアスパラガスを食べたところ、そのおいしさに驚き、その後はわざわざ土をかぶせる農法が発展したということです。いまでも発祥の地、イタリアのヴェネト州バッサーノ地方のホワイトアスパラガスは欧州のグルメ垂涎のご当地アスパラガスとして有名です。
ヨーロッパのアスパラガスは年に2回(春と夏)収穫されることが多いですが、特に春のアスパラガスの新芽は、冬の間に根株に蓄えられた栄養が行き渡り、甘みと風味がつよい絶品に育ちます。

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3,日本への伝来と普及

ヨーロッパでは、2千年以上前から食されてきたアスパラガスですが、日本への伝来は江戸時代。当初は観賞用の植物として栽培されていました。その後明治時代より食用にされるようになり、戦前戦後を通してホワイトアスパラガスの缶詰は大量に輸出されました。おなじみのグリーンアスパラが青果店の店頭に並ぶようになったのは昭和50年ごろからということです。
今日では欧州産のホワイトアスパラガスの瓶詰が量販店の店頭に並んでいます。

4,カラダにいいんです

アスパラガスに含まれるアスパラギン酸は疲労回復の効果、滋養強壮作用があり、遥か昔から薬用としても栽培されてきました。アスパラギン酸入りのドリンク剤を愛飲しているアスリートも多く、窒素代謝や糖質の代謝を促進して、疲労に対する抵抗力を高める働きがあります。
そしてこの栄養分は細くてかよわい穂先部分に集中しており、畑でも店頭でも、細心の注意をもって取り扱われます。フランスではアスパラガスの穂先を「マドモアゼルの小指」と呼んで、大切に扱います。

5,日本の旬

青果売り場の店頭で、生のホワイトアスパラガスを目にすることも増えてきました。
日本国内では、佐賀県をはじめ九州各県、長野県、そして北海道が主な産地です。佐賀県産は1月ごろから出荷が始まりますが、長野県や北海道のホワイトアスパラは、初夏から夏が旬です。桜も一段落したころ、八百屋さんの店頭でホワイトアスパラを見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

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寅年生まれ。千葉県船橋市出身。私立文系大学卒業後は人工衛星からパチンコ台まで広く組み込まれるCPUのOS開発に携わるが、突然食品業界へ転身。農水畜産の輸出入、国内・海外での営業、事業開発など食品ひとすじ35年。クルマ、写真、映画を愛し、料理とキャンプ(焚き火)はライフワーク。二人娘の子育ても卒業し、社会人経験の総まとめを大泉工場にて行う予定。