徳島県の山あいの小さな町「上勝町」~その1~

こんにちは!
今回コラムをコラムを担当します。大泉工場の内田です。

みなさんは「上勝町」をご存じですか。

上勝町は徳島県の山間にある小さな町です。リサイクル率が80%台におよび、上勝町の暮らしは世界から注目されています。2021年には欧米で人気が高い旅行ガイドブック『ロンリープラネット』に掲載されました。

そんな上勝町へ1月26日(金)、27日(土)の1泊2日で環境について学びに行ってきました。

この地を訪れて学んだ取組を紹介するとともに、私が見たもの、感じたもの、手にしたものがみなさんの暮らしを、より豊かにするためのヒントになればと思いご紹介します。

「上勝町」って?どこ?どんな町?

徳島県のほぼ中央に位置する上勝町は、標高100〜700mの間に大小55の集落が点在する人口1,278人(2023年12月現在)の小さな町です。
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町を流れる勝浦川の上流にはブナの原生林が広がる高丸山や、見事な水苔が群生する山犬嶽など豊かな自然が残されているほか、急峻な山の斜面には棚田が点在し、その景観は『日本の棚田百選』に選ばれています。

少子高齢化(半数が65歳以上)と過疎が進んでいる町で、昔はみかんや木材が主要産業でしたが林業の低迷、1981年に記録的な大寒波が町を襲い、みかんの木がほぼ全滅しました。
みかんづくりに代わる、高齢者が活躍できる仕事を模索する中で、山の中という立地を生かした「葉っぱビジネス*1」がスタートしました。

また他の自治体に先駆けて2003年には日本初のゼロ・ウェイスト宣言し全国から注目されています。

*1葉っぱビジネスは、1986年頃から徳島県上勝町で始まりました。料理に添えられる葉っぱ(つまもの)の生産販売。生産者は町内の約150軒の農家さん。 農家さんの平均年齢は70歳。 高齢者の方や女性の方が中心になったビジネスです。

ゼロ・ウェイスト宣言への経緯

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ゼロ・ウェイスト宣言とは、個人から自治体までさまざまな主体が無駄や浪費をなくし、ごみを出さないようにすることを目標に、できるだけ廃棄物を減らそうとする取り組みです。
1996年、オーストラリアの首都キャンベラが『ゼロ・ウェイスト宣言』をしたことがきっかけに世界各国に取り組みが広がっていきました。

昔、ごみは野焼きで処理するのが当たり前の時代がありました。上勝町も、1997年までは野焼きを行っていました。

その後廃棄物処理法が改正されて野焼きが禁止になり、2基の小型焼却炉を導入しましたが、その1基から有害なダイオキシンが基準値以上排出されていることがわかり、導入して3年足らずで2001年には焼却炉を閉鎖しました。

小さな町で小さくない額を捻出して買った焼却炉を閉鎖せざるをえなくなったことが、町にとってひとつ目の大きな転機となり、CO2を排出しながらまだ使えるものも安易に灰にしてしまうごみ焼却自体をやめることへと傾いていきました。

また、ごみを焼却すると、その灰の処理にも費用がかかります。当時は徳島県内に灰を引き取る業者がおらず、山口県まで灰を運搬して多額の予算を使っていました。これがふたつ目の転機です。このように環境とコストの両面を考慮し多分別をしようという結論に至ったそうです。

そして、アメリカ人化学者のポール・コネット博士が町で講演を行った際に『ゼロ・ウェイスト宣言をしたらどうか』と提案されたのを受けて、2003年に日本の自治体として初めてゼロ・ウェイスト宣言をしました。町外の方からはよく、「宣言をしたから多分別をはじめた」と誤解をされますが、上勝町では宣言よりも前から多分別を行っており、その結果、宣言につながっています。

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2003 年 ポール・コネット博士講演会

野焼きからリサイクル率80%達成へ

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最初に実施したごみ減量策は生ごみでした。一般的に可燃ごみの中でもっとも重量を占めるのが生ごみです。この生ごみを燃やさないため、1991年に町はコンポスト購入の補助制度を作りました。

1994年にごみを減らすための「リサイクルタウン計画」を策定しました。1995年には電動生ごみ処理機も補助金制度の対象となり、当時8万円した電動生ごみ処理機は、1万円の個人負担で購入できるようになり、生ごみを家庭で処理することが浸透して、現在でも上勝町のゴミステーションはごみの匂いがしません。

また容器包装リサイクル法が施行された1997年に「日比ヶ谷ゴミステーション」(旧日比ヶ谷の野焼き場)を開設して、缶、びん、ペットボトルなど9分別の資源回収(毎週日曜、持ち込み方式)を開始しました。

初めて分別を経験する町民への普及のため、役場職員は55の集落に住む787世帯を回って環境や町の財政などの背景を説明し、ゴミステーションでの分別にも立ち会い町民の理解を得ました。

2001年1月に焼却炉の閉鎖を機に、33分別、そして4月から34分別が始まりました。
できるだけごみを減らしてリサイクルを行うため、2016年には分別数を34分別から13種類45分別に変更し、リサイクル率が初の80%台を達成しました。

まとめ

上勝町の町民が行っているごみ処理方法はとても単純なものですが、これらを毎日続けることで、生活や意識も、無駄をなくすための工夫へと向かっていき、「ゼロ・ウェイスト」の成功につながっていると思います。

次回は、ゼロ・ウェイスト宣言のシンボル、ゼロ・ウェイストセンターについてお届けします。

OKS CAMPUSでは、コンポスト、RECYCLE STATION、CAMPUS LIBRARY、REUSE BOXの設置、1110CAFE/BAKERYの家具やRECYCLE STATIONなどはアップサイクルし、リサイクル使用しています。