今回コラムを担当します、大泉工場の内田です。
2024年東京都の桜開花予想で3月29日。2023年は3月14日の開花でしたのでそれより15日遅く、過去10年で最も遅いサクラの開花となりました。
桜は開花から満開までの期間は約1週間から10日前後で、満開から散るまでの期間は約2週間前後と言われています。年々桜の開花が早まっており、昨今では卒業式の花となりつつあります。ちなみに私が小学校入学の年は、開花が4月2日で満開が4月9日。入学式には新しいランドセルを背負って満開の桜の下を登校した記憶が鮮明に残っています。温暖化の影響なのか。あれから50年で桜の開花が1週間早まっているのではないでしょうか。
さて今回は、桜の開花と地球温暖化についてお話致します。
春に桜の花が咲くのは?
「春に桜が咲くのは、なぜ」と聞かれたら「暖かくなるから」と誰もが答えると思います。秋と春の温度はほぼ同じで暖かさだけであれば秋に咲くはずです。暖かくても「秋には蕾がない」からではと思いましたが、蕾は、開花する前の年の夏、7~8月につくられているそうで秋に咲くことも稀にあるようです。
では、なぜ桜は春に咲くのでしょうか。
桜の開花には気温が大きく影響しています。
(開花のメカニズム)
桜の花芽(成長すると花になる芽)は前年の夏に作られ、晩秋から初冬にかけて寒い冬を越すために休眠に入ります。その後、真冬に数日から数週間の連続した低温期間(0 〜 10 ℃)の厳しい寒さにさらされると低温刺激によって休眠から目覚め(休眠打破)、開花に向けて成長が再開します。春にかけて気温が上昇するに従って花芽が成長し、日最高気温が長くなると開花します。
今年の開花が50年前の時期に近づいたと勘違いした私は「地球規模での環境改善」が進んできたなと喜んでいましたが、開花が遅れて理由が別にあったことを知りました…。
地球温暖化で桜の開花に異変
今年の開花の遅れは、「地球環境の改善」ではなく「地球温暖化」の影響でした。「開花のメカニズム」でもお話させて頂きましが、春に開花をさせるため連続した低温期間(0 〜 10 ℃)が必要です。2023年12月は10℃を下回る日が無く、年が明けた2024年1月中旬に4日間、2月上旬と下旬に4日間と暖冬傾向にあったため、「休眠打破」が充分に行われず、成長が遅れたことにより、2023年より13日も開花が遅れたそうです。
地球温暖化がもたらす、桜の開花の異変はこれだけではありません。
左の図を見てみなさんは何を感じますか。本来、桜前線は南から北へと徐々に北上して行くはずなのですが、温暖化の影響により、九州から東北南部までほぼ同時の開花になっていることに気付かれたと思います。
コンピュータも予想できなかった
2009年に九州大学名誉教授の伊藤久徳氏は、2100年までの桜の開花の様子をコンピュータ上でシミュレーションし、この様な研究結果を発表しています。
「日本周辺の気温を平均で2~3℃程度高くなるよう設定したシナリオでのシミュレーション結果によると、2082〜2100年の19年平均の「開花予想日」は、1982〜2000年の19年平均と比べて、東北地方では2〜3週間早まる一方、九州の一部地域など温暖な場所は逆に1〜2週間遅くなることが分かりました。
つまり、2100年には、3月末から4月上旬にかけて、九州から東北南部でいっせいに桜が開花することになるのです。」
研究結果の発表時点では、約90年後に訪れる環境問題と捉えていたと思います。しかし、私たちが考えている以上のスピードで地球温暖化は進んでいたのです。2009年の研究報告から15年で、3月末から4月上旬にかけて、九州から東北南部でいっせいに桜が開花となりました。
温暖化がさらに進むことで、冷え込みが十分でないために休眠打破が起こらなくなり、「桜が咲かない未来」が訪れることになるかもしれません。
まとめ
日本には、その季節にしか見られない四季折々の景色が多くあり、桜のみならず紅葉や雪景色など、美しい季節の景色の訪れが気候変動によって変貌しつつあります。
私たちが当たり前のように春になれば桜が花を咲かせるなど。日本人の文化、精神と強く結びつき、当たり前に受け入れてきた四季の光景の一つが脅かされています。
未来の人類に日本の文化、四季の光景を残すことも現代人の務めです。
地球温暖化を防ぐため、日常生活の中から“私たちにできること”を考えて、実践していきましょう。
大泉工場CAMPUSは科学、芸術、自然を融合させた環境づくりに取り組んでいます。
「素敵な環境を創造する」ために循環型のコンポスト運用やコンブチャの製造の段階で排出される水蒸気や排水、廃棄物などを可能な限り減らし再利用し、地球環境にやさしい循環型農業を実践しています。
ぜひ一度訪れ、体験して下さい。