世界最強のニワトリウェルフェアを貫く、みんなが食べたくなる卵の話

異常な暑さの日々の中、タンクトップで出歩きたい衝動を抑えながら毎日を過ごしている、KANです。

そんな本格的な暑さが到来する少し前の、今年6月、「日本のオーガニック最先端」に触れるべく、北海道で開催されたツアーに参加してきました。

そこでの出会いや経験が、ものすごく色濃かったので、何回かに分けてコラムにしていきたいと思います。

このツアーは、ドイツで活動するオーガニック専門家レムケなつこさんと、環境と人に優しい農業を目指し、生活者の食生活の改善を目的として、多角的にオーガニックビジネスを展開する、アグリシステム株式会社伊藤社長が計画したもの。

今年2月にドイツ・ニュルンベルクで開催されたBioFachで出会った、_SHIP KOMBUCHAでもお世話になっている、オーガニックスーパークランデールのむっちゃんとレムケなつこさんからお誘いいただき、参加しました。

いつも最高のバイブスをくれる二人(左がむっちゃん、右がなっちゃん)

BioFachの記事はこちらからhttps://www.oks-j.com/brain/2024/03/05/biofach2024/

数年ぶりの北海道に到着して、まず向かったのが厚真町(あつまちょう)小林農園(テンアール株式会社)。サーフスポットの浜厚真海岸まで、車で5分ほどの平飼い養鶏場です。ここの代表である小林社長(通称レンレン)が、もう最高に熱い男でしたので、初回は彼の、卵のお話から。

皆さん、卵ってどう選んでいますか?

この卵、驚くほど価格に差があると思いません?自分は卵を購入する機会ってほとんどないのですが、スーパーに行くと、1パック(10個入り)で200円のものがあったり、かたや1個200円のものがあったり。。。その価格差10倍!?栄養価、味わい、形など、さまざまな点で、このような価格に差が出てしまうのは、明らかですし、皆さんもその辺を意識して、卵を選んで・・・いますよね?

さてさて基本のお話。卵の品質は、鶏の飼育方法で大きく変わります。

ケージ飼育:一般的な飼育方法。狭いケージの中で飼育されるため、運動量が少なくストレスもかかります。生産量が安定しており安価な卵ができますが、品質は他の飼育方法と比べると、劣ることがあると言われています。

放し飼い(平飼い):鶏が自由に動き回れる環境で、飼育。運動量が多く、ストレスも少ないため、栄養価が高いと言われています。

有機飼育:化学肥料や農薬を使用せず、自然に近い方法で飼育されます。有機JAS認証取得のためには、エサも有機認証されたものを与える必要があります。

先にも述べた1パック200円の卵は、言わずもがなケージ飼育の卵。

そして今回訪れたテンアールの卵はというと、、、1個50円〜150円!

一般的な市場価格と比べると、かなり高価なものに感じられると思いますが、今回のコラムを読んでいただければ、価格以上の価値をきっと、感じていただけると思います。

あなたもすぐに、通販サイトでレンレンの卵を買いたくなる!では行ってみましょう。

養鶏場の概念を覆す、デザインされた建屋

テンアール株式会社代表のレンレンは、200羽から養鶏をスタート。もともとテンアール(小林農園)があった地区は、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震により、被災。その後、苦渋の決断の末、厚真町の浜厚真に移転し、再スタートを切りました。かれこれ11年間養鶏に携わり、今では7,000羽までに事業規模を拡大しています。

この7,000羽の鶏のうちの1,400羽は、有機JAS認証を取得した卵を産む鶏。この規模はなかなかありません。ちなみに有機JAS認証取得の卵とそうでない卵の違いは、鶏の餌にあります。

もともとテンアールの鶏たちには、遺伝子組み換えやポストハーベストの心配がある輸入資料や、黄身の色を調整するための添加物が使用されている市販の配合飼料は一切与えず、国産飼料を自家配合し、与えています。

さらにこの有機JAS認証卵を生み出す鶏1,400羽には、今回のツアーの主催であるアグリシステムが生産加工し、有機認証を取得している小麦などが与えられています。規格外の有機小麦が手に入るので、テンアールでは、その愛情のかけ方に対して、比較的安価な有機卵が生産できるとのこと。ちなみにこの二社の関係性の良さは、こちらもニヤニヤしてしまうくらい良好なものであり、その関係性があって、超良質な有機JAS認証卵が生産されていると言っても過言ではありません。

ここで飼育されている鶏の品種は、ボリスブラウンというイギリスからやってきた鶏。穏やかで飼いやすいという理由で選ばれたそうです。

そもそも、レンレンが平飼い放牧養鶏をしている理由は、ちゃんとした鶏を育てたいから。

ケージエッグの生産現場を知っている人が見たら驚く、鶏ファーストな環境

皆さんも一度は耳にしたことがあるであろう平飼い。

実は日本では平飼いの表示基準の中に、飼育密度についての定めはなく、動物福祉の先進地域のEUで設けられてる基準でも1坪あたり30羽と、結構な密度。それに対しテンアールでは1坪あたり7羽と、かなりゆとりのある飼育空間を与え、ストレスを極限まで減らして飼育しています。

さらにテンアールでは鶏舎飼育のみでなく、放牧(鶏舎の外に出てもOK!)も取り入れることで、鶏たちの運動空間や、砂浴び(鶏たちにとってのお風呂のようなもので、全身を地面に擦り付け、皮膚についた汚れや寄生虫を落とす行為)ができるようにしています。そして何より、臭いもあまり感じない!その理由は、鶏が糞をしても、次のものが出てくるまでに乾燥するため、消臭されるからだそうです。結構驚きです。採光と換気が、鶏にとって重要な要素になってくるようですし、本当に鶏たちが健康に生きる、ちゃんとした居住環境がそこにはありました。

これはオーガニックでやる・やらないではなく、本当に、どうすれば鶏がのびのび生きられるかを追求した結果であるとのこと。

とてものびのびと、自由に外に出る鶏たち

そして与えるご飯も、6割小麦や魚粉、貝殻カルシウムなど、配合比率を変えながら与える徹底ぶり。

基本的には北海道産の、作り手の顔がわかるものを選びぬき、自家配合しています。この鶏は何を食べているの?という質問にも、完璧に返答ができる。まさに我が子を育てるのと、ほぼ同等です(もしかしたら現代社会における子どもの食事よりも、安心安全かもしれません)。

鶏たちのご飯を自家配合!安心安全高品質!

また北海道ならではなのかもしれませんが、害獣として扱われるキツネから鶏を守るため、微弱の電流が常に流れている電線が至る所に張り巡らされていました。広大な北海道ならではの設備です。

さぁいよいよ、テンアールの卵について。

目の前でコロンと生まれた卵・・・なんかもう、奇跡です

そもそも鶏というのは、メスだけでも卵を産むことができる生き物です。しかしテンアールではメンタルヘルスのケアという理由で、養鶏場内にはメス100羽に対して、オス鳥を5羽以上入れているので、出来上がる卵の8割くらいが有精卵です(ただ受精確率は100%ではないので、一部、無精卵もある可能性あり)。豆知識として、有精卵も無精卵も、栄養価の面では、大きな違いはないとのことです。

ちなみに有精卵とは、温度などの条件が揃うとヒヨコになるのが「有精卵」、どんなに上手に温めてもヒヨコにならないのが「無精卵」です。一般的にスーパーなどで売られているケージ飼いの卵は、ほとんどがメスのみで飼育するので無精卵です。

北海道の大地の恵みと、たっぷりの愛情で育てられ出来上がった卵、その味わいは、至高のものです。

最後に、卵を産み終えた鶏たちはどうなるのか。

愛情たっぷりに育てられた鶏の卵は、産卵開始から1年で質が落ちるとのことです。

一年間、しっかりと卵を産んでもらったら、レンレンは育て上げた鶏を加工業者に渡し、スモークチキンに加工してもらい、それをまた買い戻し、自社の売店で、販売をしています(オンラインショップで「ありがとうチキン」として大好評販売中)。またその他にも、親鶏を使用し、料理として直営ダイナーで提供したりもしています。最初から最後まで自分のところで完結させる、この思想にもめちゃくちゃ愛を感じました。

養鶏場隣接の直売所には、おしゃれなグッズも!

Online shopはこちら 

一般的に日本で食べられているケージエッグの割合は、全体の95%。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、かなり過酷な環境下で鶏たちは、卵を機械的に産み続けなければいけません。ぜひ一度、youtubeなどで見てみてください。直視するのが辛くなる内容ですが、知るべき現実の一つです。

自分はテンアールの養鶏場でレンレンと出会い、お話をさせていただく中で、この人はアーティストだなと感じました。

全てが鶏たちのためにデザインされ、素敵な環境を創り出し、育て上げ、最後の最後まで責任を持つ。そういった活動は、多くの人に知ってもらい、持続していって欲しいと願います。

15人のスタッフさんたちは、皆さんイキイキと7,000羽の鶏たちのお世話をし、毎朝サーフィンに行く。

とてもピースフルな小林農園テンアール。ぜひ一度、足を運んでみてください。

初めて会ったとは思えない、仲良し三人組w(左からKAN、レンレン、ヒデちゃん(アグリシステム代表))

Webサイト 小林農園(テンアール株式会社)

最後に直営のピザハウスFort by the coastでランチ。卵たっぷりのピザは、一度食べ出したら、手を止めることができなくなります。メニューはこちら

Webサイトをうっかり開くと、その場で飛行機のチケットを取ってしまうので、スケジュールを確認した上で、気をつけてクリックしてくださいね笑

(ちなみにFort by the coastでは_SHIP KOMBUCHAも楽しめます)