最近、仲良くしている韓国料理屋さんから実年齢より10歳くらい多めに見積もられていたことがわかった、ブルワー門田です。
実は今年の夏は_SHIPがコンブチャを作り始めてから過去最大の月産製造量を記録しました。そのため、ブルワリーは大忙しで、製造の仲間である宮尾と一緒に猛然とコンブチャを作り続けた結果、あっという間に僕たちの夏は終わりました。
そんな太陽と浴びることにご無沙汰だった僕に、自社で運営している大泉農場を取り仕切る竹田さんから一言
「門田さん、農場に生姜植えませんか?」
なるほど。大泉工場の長い歴史を考えると答えは決まっています。
「竹田さん、お声かけありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。」
そんなこんなで始まった農場との関わり。改めて大泉工場が大泉農場をはじめた経緯から知りたいと思い、代表のKANさんと農場運営責任者の竹田さんにお話を伺いながら振り返ってみたいと思います。ぜひお付き合いを。
大泉農場のこれまで
大泉農場は、2012年8月に始まった「FUN FOOD CAFE」から始まるオーガニックフードに対する情熱を背景に誕生しました。このカフェは、食を楽しむというシンプルなテーマに基づき、運営していましたが、代表がアレルギー問題を抱える子どもを目の当たりにし、本質的に美味しい(=健康)食事を提供したいと、オーガニックの価値を人々に伝えることを目指し、2015年10月から「Organic Works Grocery Store」に業態変更。日本ではまだオーガニック食品に対する評価が十分に浸透しておらず、食の安全性や健康への意識も低い状況に対し、オーガニックに対する関心を高める必要がありました。
ここでは、オーガニックの食材を手軽に入手できる環境を提供し、日本国内でもオーガニックの普及を促す活動が行われました。さらに、2017年4月には「大泉工場 NISHIAZABU」が誕生し、カフェや食材店に加えて、オーガニック、プラントベース、KOMBUCHAに特化した新しいライフスタイルの発信地として、都市の中心にその存在を確立しました。
しかし、日本におけるオーガニック市場はまだ発展途上であり、特にオーガニック農家の立場が十分に理解されていないことが課題とされました。大泉農場は、オーガニックの真の価値を広めるため、農家そのものに焦点を当て、消費者と生産者の距離を縮めることを目的とした取り組みを行っています。
農家が抱える苦労や工夫、そして自然と共生しながら作物を育てる大切さを知るために、農場を0から作り、自らの手でそのプロセスを体験することが大切だと考えました。自社が所有していた耕作放棄地を復活させるという大きな挑戦に取り組み、2016年には株式会社オーガニックパパ代表の八尋氏を招いて本格的な農場づくりがスタート。これにより、オーガニック農業だけでなく、地域住民や消費者も巻き込んだ体験型コミュニティファームを目指すことになりました。
この農場は、単なる農業にとどまらず、都市住民が農作業を体験できる場としての役割を持ち、家庭菜園と本格的な農業の間に位置する新しいスタイルを提案しています。農業という営みを多くの人が身近に感じられるような環境作りを目指し、他の事業とも連携を図りながら、より多様な価値を提供することを目指しています。
生姜を栽培する理由
大泉農場が生姜の栽培に至った背景には、試行錯誤の過程がありました。農場の開設当初は、さまざまな作物を試験的に栽培し、土地との相性を確認することから始まりました。その中で、生姜が特に良好な結果をもたらしました。土壌や気候条件が生姜に適していることがわかり、この作物に特化していく方向が自然に見えてきたのです。また、元々大泉工場が提供していた商品であるコンブチャとの相性も良いことが判明し、生姜栽培はコンブチャ事業とのシナジー効果を生むに違いないと確信しました。
さらに、この農場は社員にも開放され、オーガニック農業を「自分ごと」として体験する場としても機能しています。社員が自ら作物を育てることで、オーガニックに対する理解と関心を深める機会を提供していますが、その一方でコミュニティとしての運営には課題もありました。農場を維持・運営することは容易ではなく、特に集団での活動を効果的に行うためには工夫が必要でした。
農場では、土壌の栄養を保つために、廃菌床を利用する試みが行われました。廃菌床はキノコ栽培後に残る培地であり、これを土に混ぜ込むことで土壌の栄養を補充し続け土作りを地道に行いました。現在では、この取り組みは自社敷地内に設置したコンポストに置き換えられ、自社のカフェやブルワリーから出る残渣を有効活用しながら、持続可能な農業を目指しています。
このように、徐々に土壌が豊かになり、他の作物も育てられる環境が整ってきました。最終的には、農場で育てた作物をお客様に提供できる品質まで高めることを目指しています。
どのような生姜を目指したのか
大泉農場で栽培される生姜は、香りや辛みが特徴的なものを目指して品種選びが行われました。生姜は風味や辛さが料理や飲み物の味わいに大きく影響するため、特にコンブチャとの相性を考慮して品種を決定しています。また、オーガニック栽培であることから、化学肥料や農薬を使わない安心で安全な生姜を提供することを重視した結果、ご縁もあり「土佐」という品種を選定して植え付けを行いました。
循環の具体的な施策
大泉農場では、循環型農業を実現するための具体的な取り組みが進められています。_SHIP KOMBUCHAで最も多い廃棄物は出涸らしの茶葉ですが、これをコンポスト化することで、土壌の栄養を補いながら廃棄物を減らす取り組みを行っています。また、コンポスト化された堆肥は農場で再利用され、持続可能な農業の実現に寄与しています。
大泉農場の未来
大泉農場は、今後も持続可能な農業の発展を目指し、循環の輪を広げていくことをビジョンとしています。まずは川口から始まり、地域の循環型社会のハブとなることを目指しています。将来的には、郊外にも農場を展開し、都市部と地方の連携を強化することで、オーガニック農業の価値をさらに広げていく計画です。地域住民が自宅でコンポストを行い、その堆肥を農場で活用するという循環型のライフスタイルを推進し、より多くの人々が自然との共生を実感できる環境を作っていきたいと考えています。
まとめ
ここまでお付き合いありがとうございました。自社が運営している大泉農場と関わったこと、改めて代表の想いを聞くことで、これから私たちが目指していく未来に触れることができる貴重な機会になりました。同時に、土の柔らかさや香り、自分たちの体に入るものを育てる感覚は他には代え難い体験でした。私たちの農場では随時一般の方へ、農場体験を行っております。ご興味のある方はぜひお気軽お問い合わせ下さい。