実家で開催された、甥っ子のお食い初めに参加し、改めて、子どもたちの食の未来を考えさせられた、KANです。
2025年1月、埼玉県日高市にある、大正時代から続く伝統的な醤油蔵「弓削田醤油」さんの工場見学に参加してきました。この工場見学は、2024年6月に、虎ノ門ヒルズステーションタワーB1F「CASK内Restaurant W」で行われた、木桶醤油のセミナーに参加したご縁がきっかけで実現しました。
そのセミナーの様子はこちらから。
■伝統を守る醤油蔵
弓削田醤油さんは、日本でも数少ない「有機認証」を取得した、木桶で醤油を製造しているメーカーさんです。その特徴は、国産有機丸大豆や有機小麦、天日塩といった、厳選された原材料を使用し、化学調味料や保存料を一切使用しない、無添加の自然醤油を提供している点にあります。
<主な原料の生産地>
オーガニックの大豆:北海道、青森、秋田
非認証の大豆:地元埼玉
オーガニックの小麦:北海道、青森
非認証の小麦:地元埼玉
天日塩:伊豆大島<海の精>、メキシコ産
<普通の醤油と丸大豆醤油との違い>
一般的に流通している、業務用含め全体量の約8割の、「普通の醤油」というのは、脱脂加工大豆(油を搾り取った大豆)を使用して作られています。油がないため、旨味が控えめ。一方、弓削田醤油さんが作られている「丸大豆醤油」は、丸のままの大豆を使用しているので、大豆の旨味や甘味がしっかり引き出され、深みのあるまろやかな味わいが特徴といわれています。
工場見学では、木桶を用いた伝統的な製法を目の当たりにすることができました。その光景は、歴史と職人技が詰まった空間そのもの。見学後には、その日に仕込んだ生搾り醤油を使った卵かけご飯をいただく機会もありました。その味はまさに感動的で、一口ごとに、素材の力強さと職人の情熱を感じることができました。
弓削田醤油さんを繋いでくれた、信濃屋さんのスーパーバイヤー岩﨑さんが「最後の晩餐で食したい」とおっしゃっているのも、納得の一品です。ぜひ皆様も、弓削田醤油さんにお越しの際は、必食、お願いします。
至高の卵かけご飯が食べられるのはこちら。
まずは純粋に醤油の美味しさだけを楽しむ、「醤油かけご飯」。これだけで一膳ペロリといけちゃいます。
■木桶の「単位」に込められた歴史
見学中に興味深かったのが、木桶の単位に関するお話でした。弓削田醤油さんの木桶では、一度に50石(こく)の醤油を仕込むことができるそうです。
ここで皆さまにクイズです。
50石は、何リットルでしょう?
ヒントはこれくらいのサイズ!
答えは9,000リットル!つまり、1石は180リットルになります。このような伝統的な単位は、醤油や日本酒の製造現場では、今でも使用されています。現代の我々にとっては、「リットル」表記の方がイメージがしやすいかもしれませんが、職人さんたちにとっては、木桶が作られた時代から使われてきた、この単位の方がしっくりくるのでしょう。
さらに、「石」の下には「斗(と)」、その下には「升(しょう)」や「合(ごう)」といった単位が存在します。一斗缶の容量は18リットルであり、10斗で1石。一升瓶は1.8リットル、その10分の1である1合は0.18リットル(180ml)です。このような単位体系は、「尺貫法」と呼ばれ、中世以降、統一された単位として江戸時代に、全国で使われるようになりました。
この尺貫法は、古代中国から伝わり、日本で独自に発展した計量法です。読んで字の如く、容量のみならず、長さや重さも表しており、日常生活や農業、建築に密接に関係していました。大正時代にメートル法を採用する法律が施行されましたが、今でも職人の間や伝統産業で使われ続け、文化や歴史の一部として残っています。
■伝統を守る理由
なぜ、現代でもこうした、ちょっと分かりづらいこのような単位が使われ続けているのでしょうか?その答えは、職人の目線に立つと明らかになります。木桶のように、一度作ると半永久的に使いつづけられる道具は、その道具が作られた時代の単位で設計されているため、伝統的な単位の方が使い勝手がいいのです。また、こうした単位を用いることで、歴史と伝統に裏付けられた製品の価値が、高まるようにも思えます。
職人さんが過去から受け継いだ技術と思考が、現代にまで息づいていることを、この「単位」という視点で考えると、歴史を感じてなりません。
■守ることと攻めること
伝統的な道具と技術、知恵を使って作られる素晴らしい商品の数々。今回の工場見学では、その価値の高さを改めて感じました。そしてもう一つ、忘れてはならないのは、弓削田さんの次世代に向けた挑戦。
守るものを守りながら、新しいプロダクトの開発や活動を、積極的に行なっている姿勢に、感銘を受けました。
以前のコラムでも書きました、木桶醤油ナッツもその一つ。ミックスナッツに醤油という、斬新な組み合わせが、食べる人の心を掴んで離しません。本当に美味しいプロダクトが、どんどん生まれています。
このような、伝統を大切にしながら次世代に向けて動く姿勢は、我々大泉工場の理念とも通じています。私たちは、発酵技術や植物性の素材を活かした商品開発を通じて、持続可能な未来を目指しています。
伝統と革新を融合させながら、新しい価値を生み出していくことで、多くの人にとって「素敵な環境」を提供できる企業でありたいと、思っております。
<余談:健康診断の飲酒量確認も「合」>
みなさん、毎年健康診断は受診されていますか?
必ず確認させられる飲酒量も、「合」単位ですよね。備考で(1合=180ml)と記載されてはいますが。これもやはり、健康診断を受ける主要な層が中高年や高齢者であること、そして医療現場での慣習が大きく影響しているからだと考えられます。
健康診断の現場で、飲酒量の確認が「ml」に変わったらと思うと、なんだかやるせ無い気持ちになるのは、自分だけでしょうか・・・。
_SHIP KOMBUCHA<醤油と同じく、発酵しています。>https://oks-kombuchaship.com