醤油に恋した90分

スタジオの観葉植物に水をあげすぎてしまい、枯らしてしまうという失態を犯し、自己嫌悪に陥っている、KANです(何事もやりすぎは良くない)。

みなさん、日本人一人当たりのお醤油の年間消費量、どれくらいかご存知ですか?答えは、「6.2リットル」。多いように感じますが、実は50年前と比べると、使用量はなんと半分になっているんです。これは食文化の変化が大きく影響していて、お米の消費量の減少と比例しています。

一方、海外では50年前と比べると出荷量は約30倍に。もともと母数が少ないということもありますが、見事にXになっています。

日本人の魂の調味料とも言えるお醤油。

「微生物の働きによって生まれる」という文脈で、_SHIP KOMBUCHAの大先輩にあたる食品「お醤油」。

消費量が落ち込んでいる中でも、しっかりと地元に根付き、熱い想いで日々、醸造を続け、本当に美味しいお醤油を探求し、人々に届けている素晴らしいブランド「弓削多醤油(ゆげたしょうゆ)」に恋をしたお話を、お届けしたいと思います。

■醤油は安心と旨みの両立が必須

2024年6月22日(土)、自分のアニキ的存在である信濃屋スーパーバイヤー岩崎さんからの「You 来ちゃいなよ」の定番の誘い文句に乗っかり、虎ノ門ヒルズステーションタワーB1F「Cask内のレストランW」にて開催された、木桶醤油の世界にどっぷり浸かれるセミナーに参加してきました。

岩崎アニキ、日本の食の未来を一手に担う、スーパーバイヤー

今回の主役である「弓削多醤油」は、埼玉県坂戸市にある、101年目の醤油蔵。社長の弓削多さんは、「醤油は食品。安心して口に入れられるものでなくてはいけない。そして醤油は調味料。うまくなければ意味がない。」をモットーに掲げ、4代目当主として蔵を牽引されています。

■知っておいて損はない、醤油の歴史

お醤油は、800年前に中国から伝わったとされています。始まりはお味噌を作る過程でできる「たまり醤油」。できる量も少ないことから貴重品とされ、貴族のみが使用することを許されていたものだったそうです。

時代が進み400年前、江戸が中心の時代となり、関西から千葉に船で伝来し、一般の方々も消費するようになりました。

ちなみに日本で一番古いお醤油屋さんがヒゲタ醤油さん。「ヒゲタさん」が作ったのではなく、創業者の自慢が「髭」だったことから、ブランド名がそうなったらしいです。。。なんじゃそりゃ笑

その後、お醤油の日本一の生産地は、千葉県野田市へ。弓削多醤油のある埼玉県では、200年前くらいからお醤油の生産がスタートしたとのことです。

■お醤油の種類と効能

お醤油は全部で5種類あり、その中でも最も多く使われているのが、濃口醤油。お醤油の元祖であるたまり醤油は、全体の1パーセントしか作られていないそうなのですが、近年、「グルテンフリー」の流れを受けて、注目が集まっているそうです。

<濃口>

原料が、大豆と小麦半々。

<薄口>

実は濃口よりもお塩をたくさん使っており、塩分が高い。

風味を抑えるために、関西で生まれたとされる。

<たまり>

原料は大豆のみ。

<再仕込>

仕込みの際、塩水の代わりに醤油を使う。

5種類の中で、最も旨みが多い。

<白>

小麦(麦麹)と水、塩のみで作る。

【醤油の代表的な7つの効能】

・消臭効果:生臭さを消す

・加熱効果:食欲をそそる香り

・静菌効果:雑菌から守ってくれる

・緩衝効果:美味しいphに保ってくれる

・相乗効果:両方の良い部分が引き立つ

・対比効果:隠し味的な

・抑制効果:塩辛さを和らげてくれる

参考URL<職人醤油>

■なぜ弓削多醤油なのか??

弓削多醤油4代目当主弓削多社長

我らが(?)岩崎さんが、弓削多醤油をご贔屓にしている理由。まずなんと言っても「安心安全」と「有機」に対するこだわりが強いところ。

弓削多醤油は、有機栽培の原材料と、国産の大豆・小麦を使用することにこだわっています。その理由が単純明快。全てが安心安全と、「発酵」につながっていたのです!

ご存知の方も多いかもしれませんが、現在、お醤油の原料である大豆のほとんどが、外国産。コスト面を考えると、安い海外産のものが主流となるのは、理解できますよね。

しかし弓削多さんは数え切れない回数の実験を繰り返し、外国産の大豆より、国内産の丸大豆の方が、発酵具合がいい、さらにいうと、有機丸大豆がより、発酵の調子がいいということを導き出しました。

正直、国内産有機大豆生産量は全体の0.02%と、かなり貴重なものであり、コストも上がりますが、いい商品を届けたいという想いと、契約栽培の農家さんがサステナブルに生産できることを目指し、有機を使い続けているとのこと。

最高の考え方ですよね。もう、恋しちゃいますよね。

もちろんその他の原料にもこだわりを持ち続け、日々、探求していらっしゃるとのことです。

(ちなみに弓削多醤油のある埼玉県は、県土に占める河川面積が3.9%、なんと日本一なのです。ですので当然、水にもこだわっています)

■木桶の弓削多

そんな弓削多さんの大きな特徴の一つが、なんと言っても「木桶」。

こだわりの理由は、木桶には微生物、菌がちゃんと棲みつき、とても香りのいい醤油ができあがるそうなのです。

発酵具合によって、香りは変化します。合理化と生産性ばかり求める世の中に対し、ヒトの口に入るものは、ゆっくりじっくり、しっかり作られたものであるべきと考えられている、弓削多さんのフィロソフィーにピッタリと言えるのが、この木桶で作られた醤油です。

■木桶のあれこれ

木桶(杉の木)には、蓋がありません。

樽と比べると大きく、作るのに技術力が必要。さらに一回作ると100年以上も保つ優れものであり、そのおかげで、新しく作る機会が少ないそう(ちなみに桶職人に桶を指差して「樽」というと、めちゃくちゃ怒られるそうなので、ご注意を)。

近年では、醸造期間が木桶の約半分(半年)で味わいも均一に作れる(木桶の場合、蔵付きの菌を使うので、味わいが完璧に均一にはなりずらい)ことから、ステンレス桶がメジャーになっているとのことで、ますます、その生産量は減少の一途を辿っています。

それに伴って、現在、木桶で作るお醤油屋さんは、全国に100軒程度にまで減ってしまっているようです(お醤油屋さん自体、全国に1000軒とそこまで多くはない)。

そんな中、近年では、日本の伝統的な木桶醤油を広めようと、作り手さんたちがお互いに手を取り合いながら、活動を行っているそうです。

その大きな活動の一つが、小豆島で定期開催されている桶づくりワークショップ。一時は日本に(=世界に)一人まで減ってしまった桶職人が、この活動を通じて今では4人に。日本の伝統文化とも言える桶。作れる職人さんが増えていってほしい限りです。

この活動に共鳴し、信濃屋の六本木ヒルズ店には、大きな木桶が展示されています。ぜひみなさん、見に行ってください。なかなか見応えのある桶が吊らされておりますよ。

信濃屋六本木ヒルズ店web site https://shinanoya.co.jp/newshop/newshop.html

■虎ノ門ヒルズのgrocery storeと、弓削多醤油とテロワール

昭和5年、酒類食品店として世田谷で創業した信濃屋。歴史のある食品店が2024年、虎ノ門ヒルズビジネスタワーにgrocery store「cask」をオープンさせた理由。それは一次生産者を想ってのことだったそうです。

日本において、食の分野では「消費者優位」になり過ぎていることを懸念。欧米的な、「食の価値を高めること」の大切さを、小売の視点から見つめ、考え直し、オープンしました。

疲弊している生産者を救いたい。日本の誇れる調味料の消費が減ってしまっていることに対し、なんとかしたい。生産者と共に歩んでいくという想いが、caskにはあります。

UG大泉工場NISHIAZABUでも取扱のある、木桶醤油のMIXナッツは、信濃屋のオリジナル商品。これが、一度食べ出したら止まらなくなる逸品ですので、ぜひ一度、お試しください。

サラダにまぶしても美味しい、木桶醤油のミックスナッツ。止まらなくなる美味しさです。

大泉工場NISHIAZABU web site https://oks-nishiazabu.com

岩崎さんや、多くの生産者さんと会話をさせていただく時、「テロワール」という言葉が出てきます。この言葉、その土地の自然環境が、食べ物や飲み物の味に与える影響を表し、特にワインに与える影響という意味で使われることが多いのですが、みなさんは、ワインに限らずこの言葉を大事に使っています。

日本でも地産地消という言葉があるように、現代において、その土地で採られた(生産された)食品や文化を、大事にしたいという思想があります。日本各地のテロワールを広げていくことも、食の未来に対するアプローチには必要なのかもしれません。

■弓削多醤油のこれからの100年

弓削多社長は、埼玉県日高市に、「醤遊王国」という、醤油をまるっと楽しめる施設を作り、醤油文化を啓蒙していく活動を行っています。所狭しと並べられたお醤油の数々は、圧巻です!

こう言った場所で、木桶で微生物によってゆっくりじっくりと極上のお醤油が作られていく工程を、消費者の方々にしっかり見せるというアクションは、それそのものが気づきに繋がり、未来のいい消費行動にもつながります。興味深い世界観を見てもらう、体験してもらうことの重要性を、改めて感じます。

余談ですが、大泉工場スタッフも休みの日に、ビール工場に見学に行ったという話をしてくれました。こう言った体験は、人生を豊かにすると思います。

弓削多醤油創業100周年で作った木桶は、地元の木を使って作られた、特別なもの。テロワールという言葉と共に、そう言ったアクションというのは、これからとても重要になってくると感じられます。

あなたもきっと、恋に落ちる。創業100年を超え、次の100年に向けてアクションを続ける弓削多醤油のお醤油、ぜひ手に取ってみてください。

セミナーでプレゼントされた、ミニミニ木桶。かわゆす。

弓削多醤油web site https://yugeta.com

大泉工場も地元、埼玉県川口市を大切に想い、古き良きを新しく、未来に繋がるアクションをしていきます。

大泉工場web site www.oks-j.com

■お楽しみの醤油ランチコース

お話を伺った後、弓削多醤油をふんだんに楽しめるランチコースを堪能。どのお食事も最高に美味しかったです。_SHIP KOMBUCHAも楽しめるレストランW、ぜひ足を運んでみてくださいね。

<3皿醤油テイスティング>

左から生醤油(非加熱なので、後味の旨みがすごい、酵母菌、乳酸菌が生きている)、真ん中が生醤油を加熱した有機醤油(濃口)、右が再仕込醤油で塩水を使わない(見た目は一番濃いが、塩分が一番低い)。

自分的には生が一番美味しくいただけました

<前菜>

昆布〆真鯛のカルパッチョ 香草添え

〜弓削多生醤油の岩海苔ジュレソース〜

岩海苔を楽しむとお醤油の相性が、言わずもがな、ばっちり

<スープ>

自家製コンソメスープ

〜弓削多醤油3種類のマリアージュ〜

コンソメを10時間以上煮込んで作る

自分好みのお醤油と合わせて楽しむ、コンソメスープ

<リゾット>

帆立バターのチーズリゾット

〜弓削多醤油とのペアリング〜

バターと醤油の背徳感1000%の絶品リゾット

<メイン>

和牛の熱々鉄板ロティ

〜搾りたて生醤油の香りと生わさびの風味〜

生醤油を一番美味しく味わうために、熱々の肉にかけて楽しむと、香りがもっとも楽しめる

<デザート>

弓削多木桶醤油を使った濃厚バスクチーズケーキと、ワイングラスで楽しむ有機水出し緑茶

日本人なら誰もが好きな、甘しょっぱさは最高のご褒美

<おまけ>

ウェルカムドリンクは、有機煎茶と和紅茶を抽出し、自然発酵させた、埼玉県川口市_SHIP KOMBUCHA ORIGINAL

全ての料理との相性抜群な、発酵スパークリングティーKOMBUCHA

_SHIP KOMBUCHA web site _SHIP | 日本のコンブチャブランド(発酵スパークリングティー) (oks-kombuchaship.com)

日本の伝統調味料の世界、まだまだ可能性があると実感した、素敵な時間でした。これからも、テロワールに恋していきたいと思います。