mizuiRoインタビュー番外編では、大泉工場と共に活動してくださる社外の「mizuiRo」な方々を、人柄や価値観にフォーカスを当てご紹介していきます。
参考記事:mizuiRoとは?
Vol.4である今回は、ベジタリアンチャンスジャパン主催 ベス企画代表取締役 河野里美(かわの さとみ)さんにお話を伺いました。
ベジタリアンチャンスは「未来への食事」をテーマに、毎年ミラノで開かれているヴィーガン料理人のコンテストです。2020年9月2日(水)に日本大会が築地にて初開催され、大泉工場はスポンサーとして協賛をしています。
インタビューではベジタリアンチャンスジャパンの運営に参画されている、ベジフードプロデューサーである千葉芽弓(ちば みゆみ)さんにもご同席いただきました。ベジタリアンチャンスジャパンの掲げる「未来の食事」とはいったい何なのでしょうか。そして日本のヴィーガン料理の可能性ついて、伺ってきました。
ベジタリアンチャンスジャパン主催である株式会社ベス企画代表取締役。東京生まれ東京育ち。
家業が印刷業だったことから印刷の会社を継ぐ。その後、印刷だけでなく企画を手掛けるベス企画を創業。出版制作、イベント企画・運営、マネジメント、スクール事業など多角的に事業を展開。
ベジフードプロデューサーとして、ベジタリアン・マクロビ業界で幅広く活躍。日本の伝統食を大切にしたnatural VEGANのメニュー・製品の開発コンサルティング、ヘルシーライフスタイルのアドバイザーなどを手掛ける。
ベジタリアンチャンスジャパンでは、食のスペシャリストとして、SNSでの情報発信、オフィシャルブックの執筆など、大会運営に参画。
日本初開催。ベジタリアンチャンスジャパンとは?
――今回、日本で初開催のベジタリアンチャンスジャパンですが、どのような大会なのでしょうか。
河野:
ベジタリアンチャンスジャパンとは、今回日本で初開催された、ヴィーガン料理人のコンテストです。
もともとは、ミラノにあるヴィーガンレストラン・ジョイアのシェフの「ヴィーガン料理をより普及させたい」という思いから始まった大会です。2014年から開催され、最初はミラノのレストランで小規模開催だったものが少しずつ広がって、今では5回目になりました。
ミラノの世界大会の内容を、そのまま日本に持ってきて始めたものがベジタリアンチャンスジャパンです。
千葉:
ベジタリアンチャンスジャパンの特徴で面白いのは「ゆかりのある土地の郷土料理のエッセンスを入れる」という点です。
ヨーロッパでは伝統や建造物などを大事にする価値観が浸透していますが、日本はそういった宝が沢山あるのに、その魅力を蔑ろにしている部分があるように思います。伝統を次世代に受け継いで、世界に発信する場として意味のある大会だと思っています。
あとは、ヴィーガンと言っても加工品や化学調味料、添加物などは使わず、食材は自然農法か有機農法で栽培されたものを使うと、しっかり謳われている大会なんです。ヴィーガンでもただ動物性のものが入っていなければいいというわけではないので。日本でもそういった大会はなかなかないので、素晴らしいコンセプトだと思います。
河野:
イタリアの大会は厳格なルールの中で行われていますが、日本大会は「どんなカテゴリーの料理人にも、もっと野菜料理を作ってほしい」というところにフォーカスしています。そのためファイナリストのシェフの分野もちがいます。
野菜だけでは なかなか旨味成分を出しづらいのですが、日本のシェフは発酵や独特の技術を使って料理を美味しく仕上げていきます。ヴィーガンのシェフだけでなく、肉や魚を使う腕のいい料理人は、野菜のみで料理をしてもすごいものを作るんですよね。
あらゆる分野のシェフが美味しい野菜料理を作ることで、野菜料理の価値が上がり、料理人がそこを目指すようになる。そうなってくれたらいいなと思います。
――ベジタリアンチャンスジャパンに参加されたシェフの皆さんは、ヴィーガンのシェフではないのですか。
河野:
そうなんです。ファイナリスト8人のうち、マクロビオティックのお店を出されている方が1人いらっしゃいますが、基本的にヴィーガン専門のシェフはいないですね。
優勝した平田シェフも20年間フレンチをやってきて、いろいろな味覚を持った上で作っているからこそ、おいしい野菜料理ができるのだと思います。
足し算ではなく、極めたところから引き算をしていく。日本というミニマリズムの美しさを表す、本当に洗練されている味でした。
千葉:
それぞれ違うフィールドで思いをもって食に携わるシェフ達だからこそ、ベジタリアンチャンスジャパンが面白い場になったのだろうなと思います。
今ではファイナリストの方同士が繋がって、オンラインで勉強会、交流会などで情報交換をされていると聞きました。素晴らしいことだと思います。
コロナ禍だからこそ、伝えたい。ファイナリストたちの思い
――今回はコロナ禍での開催ということで、苦労されたことはありましたか。
河野:
実はコロナの影響で大会が3回延期されました。
もともと2020年6月に観客を入れて開催を予定していましたが、今回は無観客で開催をしました。イタリアのシェフたちが審査員として参加予定だったのですが、日本以上にイタリアの新型コロナウイルスの感染者が増加して大変なことになってしまったため、それも中止になりました。
その後も、なんとかいい形での開催ができないかと試行錯誤した結果、9月に築地にて無観客で開催することになりました。
千葉:
大会当日、シェフによる料理のプレゼンがあるのですが、いま飲食店が本当に大変な中で改めて自分の思いを口にすることで、自分のやりたかったことやビジョンを見直せる良い機会になったのかなと思います。このタイミングで大会を開催できたことに意味があったなと思いますね。
――大会当日、印象的だったシェフの言葉はありますか。
千葉:
印象的だったのは優勝した平田シェフの言葉です。
「腸内環境や細菌も、善玉菌や悪玉菌もいることでバランスが取れている。なんでも殺菌してしまうことは私たちの免疫も下げてしまうと伝えていきたい。」
「日本の発酵文化を HAKKOという世界共通用語として広めていきたい。」
そうおっしゃっていた姿がとても印象に残っています。
平田シェフは普段、120年の古民家に住み着いた菌と共生したお料理を作っているので、常在菌をとても大事にされています。だからこそ平田シェフの料理はとにかく美味しいんです。
――日本には昔から発酵文化が根付いている国ですし、HAKKOという共通言語で世界に広まっていったら面白いですね。
ベジタリアンチャンスジャパンの提唱する「未来の食事」とは?
――ベジタリアンチャンスは「未来の食事」をテーマに掲げています。「未来の食事」とはいったい何でしょうか。
河野:
未来の食事とは「持続可能な食」を指します。ミラノの本大会で準優勝経験のある本道さんは、よく「懐かしき未来へ」という言葉を使います。昔は行っていた余分なものをそぎ落としたミニマムな食のありかたが、未来に一番必要なのではないか、そういう意味を込めて「未来の食事」と言っています。
でも昔のものをそのまま未来に持って行くことは出来ません。
イタリアの世界大会は食品添加物の使用に関してとても厳しいルールを設けています。もしかしたら保存剤などの添加物を使わなければ、より食べづらいものが出てきてしまうかもしれないですよね。そういった添加物を全部抜くことがいいのかは、私も答えは分かりません。
それでも食べるために本来ないものを作り上げることは間違っているような気がします。本来あるべき姿の食を伝えていきたい。
そういった「未来の食事」のかたちを提案していけたらと思います。
千葉:
本来日本は、その時に取れたお野菜でその食卓を作る、余ったものは乾物や発酵調味料にするなど、保存する方法を培って本質的なことをしていました。それが、大量生産・大量消費のなかで見失われてしまっていると感じています。
大量に安く作り、長期保存をさせようと思うから必要のない添加物や保存材を入れますが、
そうではないのだと思います。「未来の食事」とは、古き良き、温故知新のようなものですね。
<後編に続く>