僕らは日々、さまざまなサービスを享受しながら生きている。
一見、新しいサービスというと、「何を足すか」を考えがちだ。
新機能、新商品、新体験……。
もちろん、それらはサービスを進化させる上で大切な要素である。
でも、本当に優れたサービスは、少し違う。
サービスとは、引き算である。そんなことを最近、思っている。
何を引くのか。
その答えは、手間であり、迷いであり、ストレスだ。
どれだけ自然に、お客様の負担を減らせるか。その積み重ねが、結果として「また利用したい」という気持ちにつながっていくのだと思う。
それを痛感する場所の一つが、普段何気なく利用しているカフェだ。
日本中、いや世界中にカフェは存在する。
僕も1110 CAFE/BAKERYやBROOKS GREENLIT CAFEといった直営店を運営していることもあり、「選ばれるカフェとは何か」を考える機会が多い。
皆さんにも、お気に入りのカフェがあるだろう。
スターバックスやドトール、コメダ珈琲などの大手チェーンから、こだわりのコーヒーを提供する個人店まで、その種類は実にさまざまだ。
では、人は何を基準にカフェを選んでいるのだろうか。
もちろん立地や価格、味、居心地など、理由は人それぞれだ。
その中で、僕がよく利用しているのが、ベローチェである。
現在は飲食大手のコロワイドさんが運営しているチェーン店で、一度は利用したことがある人も多いのではないだろうか。
広い店内や手頃な商品価格も魅力だ。
でも、それが僕のよく利用する理由ではない。
理由は、「トイレの表示」にある。
全店舗に導入されているかまではわからないが、ベローチェのトイレには使用中かどうかがわかる、照明付きのサインが設置されており、一目で今すぐ使えるかどうかが、わかるようになっている。
席でPC作業をしていると、どうしてもトイレに行きたくなる瞬間がある。
一般的なカフェなら席を立ち、トイレまで歩き、もし誰かが入っていたらまた席へ戻る。もしくは、並んで待つ。
ほんの数十秒の出来事かもしれない。
でも、その数十秒は確実に集中力を途切れさせる。
ところがベローチェでは、ほとんどの席からトイレのサインが見える。
ランプが点灯していたなら待つ。 消えていたら向かう。
たったそれだけの違いなのだが、この「無駄な一往復(時間)」がなくなるだけで、作業への没頭感は驚くほど変わる。
一見すると、サインを「足している」ように見える。
でも実際には、僕らのストレスを引き算してくれているのである。
優れたサービスとは、何かを増やすことではない。
人が気づかないうちに、小さなストレスを一つずつ消していく仕事なのだ。
考えてみれば、世の中の優れたサービスの多くは、同じ発想でできている。
レジで並ぶ時間を減らすセルフレジ。
目的地まで迷わない案内表示。
数秒で終わる電子決済。
ホテルの枕元に配置されたコンセント。
手を上げなくても車が来る配車サービス。
上げ出したらキリがないが、これらはどれも、新しい何かを提供しているようでいて、本質的には「面倒」を取り除いている。
つまり、人の時間や思考を奪っていたものを、気付かぬうちに消しているのである。
これはプロダクトにも言えることだ。
KOMBUCHAを自宅でつくることは、実は誰でもできる。
瓶を用意し、お湯を沸かし、お茶を淹れ、砂糖を加え、スターターとスコビーを入れ、一週間ほど発酵させる。
完成したら小分けにし、次回用のスターターを残し、衛生状態にも気を配る。
やってみるとわかるが、決して難しくはない。
でも、ものすごく手間がかかる。
その時間を毎週確保できる人は、決して多くないだろう。
だからこそ、_SHIP KOMBUCHAが提供しているのは、単なる飲み物ではないと言える。
「発酵する時間」と「つくる手間」を引き算した価値でもある。
もちろん、その手間そのものを楽しめる人もいる。
手づくりだからこそ得られる発見や喜びもある。
それは決して否定されるものではない。
むしろ肯定できることとも言える。
ただ現代社会では、多くの人が忙しく生きている。
本当はやりたい。 でも時間がない。
そんな人たちの代わりに時間を預かり、手間を引き受けることもまた、プロダクトの大切な役割なのだと思う。
ものすごく当たり前のことを言っているようだが、次々に生まれてくる新しいサービスは、「何を増やしたか」よりも、「何を減らしたか」で価値が決まることを教えてくれる。
新しい価値を生み出そうとすると、僕らは何かを足そうと考えてしまう。
もちろん、それも必要だ。
でも、本当に必要なのは逆なのかもしれない。
お客様が気づかないほど自然に、一つでも多くの手間や迷い、ストレス、不安を取り除くこと。
そのためには、お客様以上に、小さな違和感に敏感でなければならない。
その姿勢が、結果としてお客様の「また○○したいサービス」につながっていく。
派手ではない。
SNSで話題になることも少ないかもしれない。
でも、本当に長く愛されるサービスは、そうした小さな引き算の積み重ねによって生まれているのではないだろうか。
僕らもまた、小さな違和感や不便さを敏感に感じ取り、テクノロジーを活用し、一つ一つ丁寧に引き算をしながら、新しいサービスを生み出していきたいと思う。
そんな活動に興味を持っていただけたら、ぜひ、僕らの活動に目を向けてもらいたい。いつでも一緒に働ける仲間を、待っています。 >大泉工場リクルートページ






