「行きたくなる店はどこ?」
こう聞かれて、どれだけの人が即答できるだろう。
世界には、本当に多くの店がある。その中で、人々に選ばれる店が生まれ、その一方で、瞬く間に消えていく店もある。
決してネガティブなことではない。常に新陳代謝が起こり、行きたくなる店は磨かれ続け、そうでない店はなくなっていく。ただ、それだけのことだ。
さまざまな国を巡り、多くのカフェやレストランを訪れてきた。その中で気づいたのは、「行きたくなる店」には、極めてシンプルな方程式があるということだ。
シンプルだからこそ、実現する難易度は高い。
そして、その方程式について考えていくと、結局、僕は「発酵」という表現にたどり着く。
以前にも述べたが、発酵とは、微生物の働きによって、人にとって有益な変化がもたらされる現象のことだ。
行きたくなる店でも、これとよく似た現象が、ごく自然に起きている。
一方で、店舗を増やしていく過程で、人、商品、空間の関係が崩れ、発酵していたはずのものが、いつの間にか腐敗へと転じることもある。気づいたときには、すべての店が閉じている。そんなことさえ起こりうる。
それでは、僕なりの単純明快な方程式を書いてみたい。
行きたくなる店の力
=(人+商品+空間)×発酵係数−訪れるコスト
ここで突然、「発酵係数」という言葉が出てくる。
僕はこれを、
人、商品、空間の関係性によって、価値が増幅、あるいは減退する度合い
と定義したい。
優秀な人がいて、確かな商品が並び、いい空間がある。
ただし、この三つは、ただ並べればいいというものではない。
人が商品の魅力を引き出し、空間がその商品を味わう時間を豊かにし、商品が人と空間に存在する理由を与える。
三つが互いに作用しはじめたとき、店の中で、目には見えない発酵が起こる。その発酵が、店全体の価値を押し上げるのだ。
発酵係数が1を上回れば、人、商品、空間がもともと持っていた価値は増幅される。反対に、1を下回れば、どれほど素材がよくても、店全体の魅力は損なわれる。
だから、どれほど空間が美しく、商品の完成度が高くても、そこで働く人のあり方が悪ければ、店の魅力はしぼんでしまう。
反対に、空間もサービスも決して洗練されていないのに、圧倒的な商品力によって、どうしてもまた足を運びたくなる店もある。
たとえば、新橋のガード下にある赤提灯の店。
人、商品、空間の各要素を、高級レストランのそれらと比べれば、決して高い点数にはならないかもしれない。それでも、なぜかまた行きたくなる。
そんな店は、三つのあいだに生まれる関係性が豊かで、発酵係数が著しく高いのだ。
店の魅力は、単純な掛け算ではない。
人、商品、空間には、それぞれ固有の力がある。そして、その関係性によって、価値は増幅もすれば、損なわれもする。
その価値が、価格や距離、待ち時間、少しの不便といった「訪れるコスト」を上回ったとき、人は「また行きたい」と思う。
そして、その小さな超過が何度も繰り返されることで、店はいつしか、選ばれる場所から、愛される場所になっていく。
面白いことに、僕らがつくっている発酵スパークリングティーKOMBUCHAというプロダクトも、まったく同じ方程式の上に成り立っている。
素晴らしいブルワーがいる。最高品質の国産茶葉や、フレーバーに使う食材がある。そして、完璧に整えられたブルワリーがある。
しかし、それらをただ集めるだけでは、_SHIP KOMBUCHAにはならない。
関わる人々の想いや、互いの関係性、その場所に流れる目に見えない空気。それらによって発酵係数が高まり、初めて、世界で認められる_SHIP KOMBUCHAが生み出される。
どれか一つが欠けても、今の_SHIP KOMBUCHAは生まれない。
行きたくなる店と、飲み続けたくなる発酵飲料。
一見異なる二つのものが、実は同じ方程式の上に成り立っていることに、改めて気づかされた。
僕らが表現する商品や店舗も、
(人+商品+空間)×発酵係数
によって生まれる価値の総量が、価格や不便を上回り続けなければならない。
いい素材を集めるだけでは足りない。
大切なのは、そのあいだで何が起きているか。
人と商品と空間。そのあいだに目には見えない良い作用が生まれ、価値を増幅し続けている状態。
それこそが、「行きたくなる店」に起きている発酵なのだ。
行きたくなる店も、飲み続けたくなる商品も、結局つくるのは人です。
人と商品と空間が互いに作用し、そのあいだに新しい価値が生まれる。大泉工場では、そんな「発酵」を一緒に起こしてくれる仲間を探しています。
僕らの考え方や取り組みに少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ採用ページをご覧ください。






