仕事をしている中で、幸せを感じることはどれだけあるだろうか。
僕はありがたいことに、結構ある。
古き良き伝統や技術を、現代の文脈に合わせてアップデートする。その過程で理解しなければならない知識や、魅力的な人たちとの交流は、日々増える一方だ。
正直、まったく追いつかない。
それでもなんとか喰らいつこうと必死でもがいている。
一方で、それをサラッとやってのける人たちがいる。
そういった人たちには、ある共通点があるように感じている。
それは、仕事とプライベートの境界線が驚くほど曖昧だということだ。
極論を言えば、生きている時間そのものが綺麗なグラデーションで彩られている。
仕事だからやる。
プライベートだからやらない。
そんな明確な線引きが存在していない。
サラリーマン時代、僕は上司に「楽しく働きたい」と伝え、叱責を受けたことがある。
「仕事が楽しいわけないだろう」
それがその上司の持論だった。
お給料をもらっている以上、自分が納得しないこともしなければいけない。
自分が右に行った方がいいと思っても、責任者である上司や社長が左だと言えば、それに従う。それが従業員としての責務であり、できないのであればその組織にいることは、本来許されない。
確かに、その意見にも一理あると思った。
しかし、面白いことに、僕から見ると、その上司は明らかに仕事を楽しんでいるように見えた。
当時の僕は、ひょんなことからアパレル業界に身を置いていた。
109系ファッション全盛の時代だった。
そもそもファッションにほとんど興味を持っていなかった僕にとって、派手な服装を身にまとったギャルたちは、宇宙人のような存在だった。
そんなギャルたちを相手に、三回り近く年齢が上のおじさん上司は、毎日のようにコミュニケーションを取りながら仕事をしていた。
今年のトレンドカラーは何か。
次に流行るブランドはどこか。
誰が注目されているのか。
もちろん、売上を作るためには情報収集は欠かせない。
興味がないからやらない、とは言っていられない世界だった。
時にはタメ口を叩かれながらも、上司は彼女たちと向き合い続けていた。
そして、その姿は、どう見ても楽しそうだった。
ある日、飲みの席で聞いてみた。
「ギャルたちにタメ口を叩かれて嫌じゃないんですか?」
返ってきた答えは、意外なものだった。
「全然嫌じゃないよ」
なんなら、休みの日にもギャル向けショップへ足を運び、店員さんたちと話をしているという。
その瞬間、僕はハッとした。
この人には、“境界線”がないのだ。
仕事だからファッションを勉強するのではない。
ファッションのトレンドを追いかけ、理解し、それを仕事に落とし込み、売上を作ること自体が、生き方になっているのだ。
そこでようやく気づいた。
僕が本当に言いたかったのは、
「楽しく働きたい」
ではなかった。
「楽しく生きたい」
だったのだ。
生きるという活動の中に、働くことが含まれている。
仕事だけを切り取って楽しい、楽しくないと考えるのではなく、生き方そのものをどうデザインするか。
あの時、上司はそれを伝えたかったのかもしれない。
もちろん、この生き方を誰にでも勧めたいわけではない。
好きなことを仕事にしたからこそ苦しむこともあるし、休みの日も気づけば仕事のことを考えてしまう。
オンとオフを明確に分けた方が幸せな人もいるだろう。
実際、僕自身も四六時中仕事のことを考えているので、仮に家族を持っていたら怒られているかもしれない。
それでも僕は、人生の大半を占める「働く」という時間を、誰かに決められたものとして過ごすより、自分の人生そのものとして捉えられる方が幸せなのではないかと思っている。
今の僕の周りにも、仕事と人生の境界線が曖昧な人が増えてきた。
休日なのに仕事の話をしている人がいる。
いや、正確には、仕事の話をしている感覚すらないのかもしれない。
旅先ではその土地の食文化や農業の話になり、新しい店に入ればサービスや空間の話になる。
面白いプロダクトを見つければ、すぐに共有が飛んでくる。
気づけば夜遅くまで議論していることもある。
しかし、不思議と疲弊感はない。
なぜなら、それは仕事ではなく、生き方そのものだからだ。
大泉工場に戻って以来、僕は人生最大とも言える挑戦に向き合っている。
日々、とんでもない量の情報と決断が押し寄せる。
正直、大変だ。
それでも前に進めるのは、こうした仲間たちの存在が大きい。
仕事を通じて、どれだけ幸せを感じられるか。
どれだけ未来を信じ、夢中になれるか。
そんな仲間が少しずつ増えてきた。
だからこそ、これからの大泉工場は面白くなると確信している。
そして僕自身も、これから先、「楽しく働く」のではなく、「楽しく生きる」ことを大切にしていきたいと思う。
こんな思想に共感し、一緒に未来をつくってみたいと思った方は、ぜひ一度、大泉工場に遊びに来てほしい。
僕らはまだまだ挑戦の途中だ。
だからこそ、仕事と人生のグラデーションを楽しみながら、自分たちなりの幸せな働き方、生き方を模索したい仲間と出会えたら嬉しい。
自慢のスタッフたちが、皆さんをお迎えします。






