なぜ僕らは、VeganではなくPlant-Basedを選ぶのか

新年度になると、いつも少し立ち止まって、この一年間自分たちは何をしてきたのか、そしてどこに向かおうとしているのかを考える。会社としても、個人としても、一度立ち止まって方向を確認するにはいいタイミングだ。

そんなことを考えていると、よく聞かれる質問を思い出す。

「大泉工場はVeganの会社なんですか?」

僕らは動物性の食材を扱わない事業を展開しているので、そう思われるのも無理はない。でも実は、スタッフの中で自らを「Vegan」と名乗る人はほとんどいない。そして、僕自身もVeganではない。これを言うと驚かれることも多い。

ではなぜ、動物性の食材を扱わないのか。

その理由はとてもシンプルで、地球環境や健康のことを考えたときに、「Plant-Based Products」が、今の僕らの理念に一番合っている選択肢だと考えているからだ。

ただし、ここはとても大事なポイントなのだけれど、もし将来的に研究が進み、別のアプローチの方が環境にも健康にも良いということが科学的に証明されたなら、僕は柔軟に方針を変えるつもりでいる。Plant-Basedという言葉や概念そのものを守りたいわけではなく、「素敵な環境を創造し続ける」という目的に対して、最も合理的で、最も未来につながる方法を選び続けたいだけなのだ。

とはいえ、劣悪な環境下で飼育されている工業化された畜産や、明らかに身体に悪影響を与えるような加工肉などを、事業として広めていく活動は、今後もおそらくしないと思う。このあたりのスタンスは、これからも変わらないだろう。

ここまで読むと、大泉工場が「Vegan」を推奨しているのではなく、あくまで「Plant-Based」を推奨している、ということが少し伝わったのではないだろうか。

そもそもPlant-Basedとは何か。
とてもシンプルに言えば、「植物由来の原料から作られた食品」のことだ。大泉工場では、それに加えて「Organic / Naturalであること」もとても重要だと考えている。

Plant-BasedとVeganの違いは、よく似ているようで、実はアプローチが違う。

Plant-Basedは、植物を積極的に摂取していこうという考え方。
Veganは、動物を搾取しない、動物性のものを摂取しないという考え方。

結果として、どちらも動物性を含まない食事になることが多いのだけれど、その出発点が違う。

整理してみると、こんな違いがあると思う。

Plant-Basedは、環境や健康をより良くするために植物性食品を選ぶという考え方。
Veganは、動物愛護や倫理的な理由から動物性食品を選ばないという考え方。

つまり、同じ食事スタイルに見えても、思想の入り口が違うのだ。

ここ数年、Plant-Based Foodが世界中で注目を集めている大きな理由の一つが、Food Techの存在だと思う。

少し前まで、「野菜=副菜」というイメージが強かった。サラダや付け合わせ、健康のために仕方なく食べるもの、そんな位置付けだったと思う。でも最近は、野菜や豆、穀物などが主役の料理やプロダクトがどんどん増えてきている。

その代表例が、代替肉だ。

2000年代に始まったこの流れは、2010年代に入り、アメリカのビヨンドミートやインポッシブルフーズに巨額の投資が集まったことで、一気に世界中に広がった。大泉工場でも、インドネシア発祥で大豆を丸ごと発酵させて作るテンペを、新しい形で世界に広げようとしている企業に出資するなど、Plant-Basedの流れの中でいくつかのアクションをしてきた。

こういったプロダクトが注目される背景には、畜産業と環境問題の関係がある。

世界の温室効果ガス排出量の中で、畜産業が大きな割合を占めていると言われていたり、牛の飼育には大量の水や土地が必要だったりと、人口が増え、肉の消費量が増え続ければ、この問題はさらに大きくなっていく。

一方で健康の側面でも、動物性タンパク質の過剰摂取と、がんや肥満、心臓病などの生活習慣病との関係を指摘する研究も多く存在している。また感染症の発生源として、畜産や野生動物との関係が注目されることもある。

だからといって、すべての畜産が悪だと言いたいわけではない。日本の畜産農家さんの中には、驚くほど丁寧に、愛情を持って動物を育てている方もたくさんいる。地域の循環の中で成り立っている小規模な畜産などは、本来とても大切な産業だと思う。

一方で、Plant-Basedの代表格である代替肉も、すべてが完璧というわけではない。新しい食品を開発するには多大なエネルギーやコストがかかるし、本当に環境負荷が低いのかという議論もある。

つまり、肉が悪で、代替肉が正義、という単純な話ではないのだと思う。

僕が大切だと思っているのは、「どちらが正しいか」を決めることではなく、「より良い未来につながる選択はどれか」を考え続けることだ。

持続可能な社会を実現していくためには、テクノロジーの力は間違いなく必要になる。代替肉や培養肉のような最先端のFood Techもあれば、発酵のように何百年、何千年と続いてきた伝統技術もある。既存の食材を違った角度で使うことで、新しい価値を生み出す方法もある。

食の未来は、おそらく一つの正解に収束するのではなく、さまざまな技術や思想が混ざり合いながら、多様な形で広がっていくのだと思う。

その中で、自分たちは何を選び、どんな事業を行い、どんな商品を世の中に届けていくのか。それは会社としての哲学そのものだと思う。

新年度という一つの区切りのタイミングで、改めて思う。

僕らがPlant-Basedを選んでいるのは、流行っているからでも、なんとなく身体に良さそうだからでもない。自分たちなりに考え、未来を想像し、その中で「今はこれがいい」と思える選択をしているだけだ。

そして大切なのは、特別なことをすることではなく、日々の小さな選択だと思う。
何を食べるか、どこで買うか、誰が作ったものを選ぶのか。

その一つ一つの選択が、少しずつ未来をつくっていく。

未来は、遠いどこかで誰かが作るものではなく、今日の自分の選択の積み重ねでできていくのだから。

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