あなたは、自分の褌<ふんどし>を貸すとしたら、どんな人に貸したいだろうか。
先日書いた「人を紹介するという覚悟」というコラムにも近いかもしれないが、他人の褌を借りるという行為は、本来、とても難しいことだ。
もう一度問いたい。
あなたは、自分の褌を誰にだったら貸してもいいと思うだろうか。
僕の答えは、意外と単純だ。
好きな相手なら貸したい。 反対に、嫌いな相手には貸したくない。
ここで言う「好き」とは、仲がいいという意味だけではない。
その人の考え方に共感できるか。
これまで積み重ねてきたものに敬意を持てるか。
同じ未来を見て、一緒に信用を積み上げていけるか。
自分の名前や信用を預ける以上、そこまで考えるのは当然のことだと思う。だから僕らは、自分が他人から褌を借りられる存在なのかを、もっと真剣に考えたほうがいい。
ビジネスの世界では、頻繁に「コラボレーション」という言葉が使われる。新商品を開発したり、お客様からの注目を集めたりする上で、有効な手段の一つだ。
そして、このコラボレーションは、単に二つの名前を並べれば成立するものではないと、僕は思っている。
相手の知名度を借りたい。
相手の顧客に商品を届けたい。
今、話題になっているから一緒にやりたい。
もちろん、ビジネスである以上、そうした計算がある。
しかし、こちらからタイアップを依頼するのであれば、知名度や話題性だけで相手に選んでもらえるはずはない。
大切なのは、なぜその相手でなければならないのか。そして、相手にとって、なぜ自分たちと組む意味があるのかを語れることだ。
僕らが心血を注いで育ててきた_SHIP KOMBUCHAにも、同じことが当てはまる。
_SHIP KOMBUCHAを立ち上げて、まだそれほど時間が経っていない頃、いくつかの大手企業からOEMの相談を受けた。
「自社ブランドのKOMBUCHAを作ってほしい」という依頼だった。
一見すると、とてもありがたい話だ。
大手企業との取引が始まり、製造量が増えれば、当然、売上にもつながる。会社として考えれば「せっかくの機会なのだから、作ればいい」という意見もあるだろう。
それでも、僕はすべて断った。
彼らが欲しかったのは、_SHIP KOMBUCHAではなかったからだ。
当時、アメリカを中心にKOMBUCHAが注目を集めていた。その流れに乗り、新しいカテゴリーの商品を自社でも持ちたい。そのために、すでに製造設備とノウハウを持っている僕らを使いたい。
話を聞くなかで、僕にはそう感じられた。
もちろん、それ自体が悪いわけではない。
ビジネスとしては合理的だし、OEMという仕事のあり方を否定するつもりもない。
ただ、その依頼のなかに、僕らが目指していた「日本のKOMBUCHA」への共感や、_SHIP KOMBUCHAでなければならない理由を見つけることができなかった。
もし、その仕事を引き受けていたら、一時的な売上はつくれたかもしれない。
けれど、そのたびに僕らは、自分たちが何者なのかを少しずつ曖昧にしていたと思う。そしてKOMBUCHAが売れなくなった時点で、その関係もそこで終わっていただろう。
目の前の売上を優先し続ければ、製造会社にはなれる。 しかし、ブランドをつくることはできない。僕らが目指している「素敵な環境を創造し続ける」ということも達成できない。
ブランドは、何をするかだけでつくられるものではない。
何をしないのか。
誰と組まないのか。
どんなに条件が良くても、何だけは譲らないのか。
その選択の積み重ねによって、初めてブランドとしての輪郭が生まれてくる。
あのときの判断が、経営的にすべて正しかったのかは分からない。
売上を逃したことも事実だし、もっと器用なやり方があったのかもしれない。
それでも僕は、自分たちが生み出したブランドを、自分たちで色褪せさせるような仕事はしたくなかった。
時間が経ち、_SHIP KOMBUCHAの見られ方も少しずつ変わってきた。
最近では、僕らが発信してきた「日本のKOMBUCHA」という考えを理解したうえで、一緒に取り組みたいと声をかけてくれる人が増えている。
単にKOMBUCHAを作ってほしいのではない。
なぜ僕らがこの飲み物を作っているのか。
日本でKOMBUCHAという文化をどう育てたいのか。
その考えごと共有し、一緒に何かを生み出したい。そう言ってくれる人たちが現れ始めた。
これは、僕らが何度も断りながら、自分たちの輪郭を守ってきた結果なのかもしれない。
だからこそ、僕らが他人の褌を借りるときにも、同じ姿勢でいたい。
流行っているから。 有名だから。 数字を持っているから。
そんな理由だけで声をかけるのではなく、相手が積み重ねてきたものを理解し、なぜ一緒にやりたいのかを、自分たちの言葉で伝える。
そして、相手から「この人たちとならやってもいい」と思ってもらえる存在になる。
そして、「大泉工場と一緒に仕事をしたい」と思ってもらうことが、僕らの企業としての大きな成長に繋がっていくと考えている。
他人の褌を借りること自体が、悪いわけではない。
しかし、借りた褌だけで勝ち続けることはできない。
まずは、自分たちの褌を磨くこと。
誰かの力を借りる前に、自分たちは何者なのかを明確にすること。
いつか誰かが、一緒に相撲を取りたいと思ってくれるくらい、僕ら自身の褌を光らせておくこと。
それを肝に銘じながら、_SHIP KOMBUCHAというブランドを、これからも磨き続けていきたい。
そして今、僕らは_SHIP KOMBUCHAだけでなく、まだ世に出ていないいくつものブランドを育てようとしている。
人の暮らしを少し豊かにし、環境にとってもより良い選択肢となるプロダクトだ。もちろん、まだ完成してはいない。ブランドとしての輪郭も、これからもっと鮮明にしていかなければならない。
だから僕らは、誰かの力に乗っかりたい人ではなく、自分たちのブランドを一緒に磨いてくれる仲間を探している。
僕らの考えに共感し、一緒にブランドを育てたいと思ってくれる人がいたら、ぜひ声をかけてほしい。






